訪問看護ステーションの開設当初、多くの管理者は、自ら売上を上げるプレイヤーとしての役割と、部下や組織を管理するマネージャーの役割の両方を兼ね備える「プレイングマネージャー」の状態にあります。
日常業務に加え、スタッフの突発的な病欠や退職が起きた場合には、管理者が人員補填に回らずを得ない状況が続くなど、激務が続いてしまうケースも少なくありません。
そのため管理者には、日頃から自分自身の体調やメンタル面を管理する「セルフマネジメント能力」を身につけていく必要があります。
今回は、訪問看護ステーションの管理者に向けてセルフマネジメントの必要性や身につける方法をお伝えします。
セルフマネジメントとは
セルフマネジメント(self-management)とは、「自己管理能力」のことです。自らを効果的に「管理」することによって、自分自身の精神状態や健康状態を安定させ、自分の能力を最大限に発揮することを目指します。
マネジメントの権威とされるピーター・ドラッカーも、「まず自分をマネジメントできなければ、他者をマネジメントすることはできない」という言葉を残しており、管理者としてセルフマネジメントを理解し、向上させることは極めて重要です。
訪問看護の管理者にセルフマネジメントが必要な理由
前述の通り、管理者は通常、ステーションの開設から1~2年間は、管理業務だけでなく、プレイングマネージャーとして多岐にわたる業務を担当することが一般的です。
しかし、自身の業務を適切にコントロールできないままでいると、オーバーワークに陥り、目標の達成や管理職自身の過重労働などの問題が生じる可能性が高まります。
もちろん、管理職自身がパフォーマンス、モチベーション、時間やタスク管理を適切に行えていなければ、メンバーへの適切な教育やフィードバックも難しくなります。
セルフマネジメントを構成する5つの要素
セルフマネジメントは、おおきく以下の5つの要素から構成されています。
(1)メンタルヘルスケア
メンタルヘルスケアは、自身の心の健康を維持し、向上させるための要素です。これはストレス管理、リラクゼーション、睡眠の質向上などを含みます。メンタルヘルスケアは、仕事や日常生活において精神的なバランスを保つために重要です。自己認識と心の安定を追求するプロセスが含まれます。
(2)レジリエンス(復元力・回復力)
レジリエンスは、困難な状況やストレスに対処し、それを乗り越えて回復する能力を指します。レジリエンスを高めるためには、柔軟性、ストレス耐性、問題解決能力、前向きな姿勢を養うことが必要です。これにより、挫折や困難を乗り越え、成長し続けることが可能になります。
(3)アンガーマネジメント
アンガーマネジメントは、怒りやイライラを効果的にコントロールし、建設的に表現するスキルを指します。怒りの適切な管理は、人間関係の向上や職場でのコンフリクトの軽減に役立ちます。アンガーマネジメントは、感情の理解、冷静な判断、対話能力の向上などを含みます。
(4)マインドフルネス
マインドフルネスは、現在の瞬間に集中し、感じ、思考する能力を高めることを指します。ストレス軽減、集中力向上、感情の認識と調整などに役立ちます。瞑想や深呼吸の実践、日常のタスクに意識的に取り組むことがマインドフルネスの一環です。
(5)キャリアデザイン
キャリアデザインは、自分の職業的な方向性や目標を設定し、キャリアパスを計画的に構築するプロセスです。これには自己評価、スキルの向上、目標の設定、キャリアプランニングが含まれます。キャリアデザインを行うことで、自己実現や職業的な成長を促進し、キャリアにおいて成功を収めるための道筋を描くことが可能です。
訪問看護の管理者としてセルフマネジメント力を高める具体的な方法
訪問看護の管理者や看護師としてのセルフマネジメント力を高める具体的な方法について解説します。
1.自身の強みを評価し期待されている役割を明確にする
自身のスキルや強みを正確に評価し、訪問看護の役割や責任を明確に理解します。自分がどのような役割でどのような強みを発揮できるかを把握することは、業務の重要なステップです。
2.自身の課題を把握する
自分の成長に必要なスキルや課題を明確にしましょう。自己評価やフィードバックを通じて、自身の弱点や改善が必要な点を把握します。
3.ゴールから逆算して計画する
目標やゴールを設定し、それを達成するための計画を立てます。ゴールから逆算して具体的なステップや期限を設定し、計画的に行動します。
4.自身のパフォーマンスが落ちる時を把握する
自身のパフォーマンスが低下する原因やタイミングを把握しましょう。ストレス、疲労、モチベーションの低下など、パフォーマンスに影響を与える要因を認識します。
5.誘惑に負けない仕組みを作る
集中力を維持し、誘惑に負けないための仕組みを構築します。作業環境を整え、時間管理やタスク優先順位の設定を行います。
6.仮説思考を持つ
問題解決や意思決定において、仮説思考を活用します。情報を収集し、仮説を立てて実行し、結果を評価・修正するサイクルを継続的に行います。
7.精神面、体調面のケア
精神的な健康や体調を大切にしましょう。ストレス管理やリラクゼーションの技術を活用し、適切な休息と健康な生活習慣を維持します。
8.マイルストーンを設定して計画を立てる
長期的な目標を達成するために、途中のマイルストーンを設定します。進捗を定期的に評価し、調整を行いながら、目標への前進を確保します。
セルフマネジメントがもたらす影響とは
さいごにセルフマネジメントがもたらす影響についてみていきます。
自分のパフォーマンスや感情をコントロールできている
セルフマネジメントが高い管理者は、ストレスや感情を適切にコントロールできます。例えば、高圧的な状況や急な変化に直面しても冷静さを保ち、感情的にならずに問題解決に取り組むことができます。また、自己評価を行い、強みと弱点を理解し、感情のバランスを取るために適切なリラクゼーションやストレス管理の技術を実践します。
自身のモチベーションや集中力を高める技術を持っている
高度なセルフマネジメントを持つ管理者は、自身のモチベーションを維持し、集中力を高めるための技術を駆使します。これには、目標設定、自己啓発、ポジティブな思考、適切な休息とリフレッシュの時間を確保することが含まれます。自身のモチベーションを高めるために、自分自身に挑戦的な目標を設定し、それに向かって進んでいく能力も重要です。
予期せぬ課題にも柔軟に対応できる
セルフマネジメントの高い管理者は、予期せぬ課題や変化に対して柔軟に対応できます。彼らは適切なリソースを活用し、チームや組織全体をリーダーシップし、問題を解決するスキルを持っています。柔軟性と適応力を発揮し、新しい情報や状況に対して迅速に対応する能力がセルフマネジメントの一部です。
タスク管理と時間管理が適切に行える
タスク管理と時間管理は訪問看護の管理者にとって不可欠なスキルです。高度なセルフマネジメントを持つ管理者は、重要なタスクを優先し、効率的に時間を使います。日常業務の計画、スケジューリング、優先順位付け、デッドラインの管理などが適切に行えます。これにより、業務の効率性が向上し、タスクの遂行が円滑に進みます。
まとめ
今回は、訪問看護ステーションの管理者向けにセルフマネジメントについて説明しました。
セルフマネジメントを向上させることは、自身の体調とメンタルを安定させるだけでなく、目標達成の意欲を高め、課題を改善する意欲を引き出し、仕事のパフォーマンスを向上させやすくし、ステーションの持続的な成長に寄与します。
自分のキャリアを満足のいくものにするためのアプローチとして、また、変化に対処するための有益な戦略の一つとして、ぜひ「セルフマネジメント」に関心を寄せるきっかけとしていただければ幸いです。
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