【令和6年6月義務化】訪問看護レセプトのオンライン請求・オンライン資格とは

令和6年6月より、これまでこれまで紙運用でおこなわれていた訪問看護のレセプト(医療保険請求分)のオンライン化が開始され、原則紙での請求はできなくなります。

また「オンライン請求」の開始と同時にオンラインで利用者の資格情報や薬剤情報等を確認・閲覧できる仕組みである「オンライン資格」も利用可能になります。

今回は、来年6月より義務化される訪問看護のオンライン請求とオンライン資格について、概要からメリット、準備、スケジュール等について解説していきます。

目次

オンライン請求とは

オンライン請求とは、レセプトの請求事務や保険者・審査支払機関の請求業務の効率化を図るために、これまで紙出力で運用されていた訪問看護のレセプト(医療保険請求分) のレセプトデータを電子化し、オンライン上で請求する仕組みのことです。

この取り組みは、請求業務の合理化だけでなく、訪問看護全体でのデータ分析、地域医療および在宅医療の実情把握など、レセプト情報の効果的な活用を促進するものと期待されています。

オンライン請求で変わること・メリット

(1)レセプトの印刷が不要になります。

用紙やインク代などのコストを削減し、作業時間を大幅に短縮し、利便性が向上します。

(2)発送業務(搬送・郵送)が不要になります。

発送業務(搬送・郵送)は不要となり、郵送時に発生する誤配達や紛失などのリスクを回避できます。

(3)レセプト請求の受付時間が長くなります。

レセプト請求の受付時間が拡大し、土・日・祝日でも請求が送信できるため、業務の負担が軽減されます。

電子媒体・紙レセプト ・6日~10日の9:00~17:30
・土日は休み
オンライン請求 ・5日~7日は8:00~21:00
・8日~10日は8:00~24:00

(4)レセプトの事前チェックが自動化されます。

レセプトの事前チェックが自動化され、エラーチェックを事前に行うことが可能となり、単純な不備を未然に防ぐことができます。

(5)資格過誤による返戻レセプトが減少します。

保険負担割合の変更や、社会保険から国民健康保険や後期高齢者への切り替わりなどをオンライン上で容易に確認できるため、資格過誤による返戻レセプトの減少につながります。

(6)電子データが一元管理できるようになります。

審査後に返送される還元帳票を電子データで一元管理できるようになります。

オンライン請求に必要な準備

オンライン請求に向けて必要な準備は、主に下記になります。

(1)レセプト作成用の端末

オンライン請求を開始するには、パソコンなどの端末でレセプト作成が必要です。以前にパソコンなどで既に請求を行っていた場合、新たに端末を用意する必要はありません。

(2)レセプト作成用ソフト

オンライン請求に適したレセプト作成用ソフトを用意する必要があります。現在お使いのソフトウェアについて、システムベンダーに問い合わせを行ってください。

(3)オンライン請求用端末

オンライン請求を始めるためには、パソコンでのレセプト作成が必要です。医療機関がすでに「医療保険請求に使用中の端末」を持っている場合、電子証明書の発行のみが必要です。しかし、医療保険のオンライン請求用端末を持っていない場合、新たに端末を導入する必要があります。

※新規導入を検討する際には、補助金の対象として調整中ですので、今後の動向を確認しておくことをおすすめします。

(4)オンライン請求用のネットワーク回線の設置

オンライン請求システムに接続するには、ネットワーク回線を設置する必要があります。接続方式として、IP-VPN方式とIPsec+IKE方式の両方が選択できますが、どちらの方式でも同等のセキュリティが確保されています。

(5)オンライン請求導入の作業

オンライン請求導入には、セキュリティ対策やオンライン請求開始に関連する届出(電子証明書を含む)などの導入作業が必要です。

各事業所で必要となる準備が異なる場合もありますので、より具体的な準備、導入作業については厚生省の以下のページにて確認ください。

参照元:医療機関等向け総合ポータルサイト:訪問看護について(オンライン資格確認・オンライン請求)

オンライン資格確認とは

オンライン資格確認は、マイナンバーカードを活用して、利用者の資格情報や薬剤情報などをオンラインで確認・閲覧できる仕組みです。訪問看護分野でも、令和6年6月からオンラインでの資格確認の利用が予定されています。

訪問看護事業所では、専用の端末とネットワーク回線を用意し、審査支払機関のオンライン資格確認システムに接続することで、患者の保険資格を即座に確認できるようになります。

訪問看護におけるオンライン資格確認

初回訪問時には、医療関係者が持参したモバイル端末などを使って、資格確認や薬剤情報の提供に関する同意を実施します。

2回目以降の訪問看護では、医療関係者が患者宅を訪問するため、患者のなりすましリスクが低いことを考慮し、資格の有効性確認は医療機関で行う仕組みとします。また、薬剤情報などは、診療中に情報提供に同意を得た場合にのみ取得します。

参照元:厚生労働省「オンライン資格確認等システムについて

オンライン資格確認は、医療保険のタイプや有効期限、資格の有効性などを即座に確認できるだけでなく、患者の同意を得た上で医療機関が薬剤や特定健診の情報をアクセスできるため、より質の高い医療提供が可能になることが期待されています。

オンライン資格確認のメリット

(1)レセプト業務の事務作業の削減につながります

マイナンバーカードを使用して、最新の保険資格情報を自動的に取得できるため、レセプト業務の事務作業が削減されます。

(2)資格過誤による返戻レセプトが減少します

利用者の保険資格が即座に確認できるようになることで、資格過誤による返戻レセプトが減少します。

(3)特定健診等の情報や診療・薬剤情報を閲覧できる

マイナンバーカードを用いた本人確認により、特定健診などの情報や診療・薬剤情報が閲覧可能となります。

(4)災害時にもよりよい医療を提供できる

災害時には、特別措置として、マイナンバーカードによる本人確認ができない場合でも、診療・薬剤情報や特定健診情報の閲覧が可能です。

オンライン資格確認を導入するには

オンライン資格確認を導入する際、そのための機器などはオンライン請求の開始に向けて準備するものと兼用できます。

オンライン請求を始めるために必要な初期費用がかかる機器などのうち、オンライン資格確認と同時に使用できるものには、「オンライン請求用端末」「オンライン請求用ネットワーク回線」および「電子証明書」が含まれます。

オンライン請求とオンライン資格確認は、同一のパソコンで実行できます。 オンライン資格確認のために新たな端末を導入する場合、その導入費用が補助対象となるような整備が進められています。

オンライン請求に向けた作業スケジュール

オンライン請求・オンライン資格確認の期限付きの経過措置

保険証とマイナンバーカードの一体化を行う来秋(2024年秋)からオンライン請求・オンライン資格確認が原則義務化されます。

しかし、訪問看護ステーションには小規模な事業所が多いこと、短期間でオンライン請求・オンライン資格確認システムを導入しなければならないこと、利用者は高齢者が多い点などを踏まえ、令和6年秋(保険証廃止時期)時点でやむを得ない事情がある場合は、期限付きの経過措置を設けることも発表されています。

訪問看護レセプトのオンライン請求の義務化の経過措置

訪問看護資格確認の義務化の経過措置

まとめ

今回は、令和6年6月に義務化される訪問看護レセプトのオンライン請求・オンライン資格についてお伝えしました。

紙の手続きから電子化への移行は、多くのメリットをもたらし、効率的で正確な医療サービス提供を可能にします。

また、オンライン資格確認の導入は資格過誤による返戻レセプトの減少や特定健診情報の容易な閲覧を促進し、医療提供の向上につながります。

訪問看護事業所の皆様にとって、オンライン請求とオンライン資格確認の導入は新たな課題ともいえるかもしれませんが、今からできることを進め、スムーズな移行を実現できるように取り組みましょう。