【令和4年度改定対応】医療保険制度における訪問看護とは

近年、在院日数の適正化と在宅看取りの推進などから、 がん末期の緩和ケアなど医療ニーズの高い在宅療養者への訪問看護のニーズが高まっています。

要支援や要介護の認定を受けている場合、基本的に公的介護保険が優先されます。それ以外の場合は、公的医療保険を利用することになります。

今回は、医療保険制度における訪問看護をテーマにその概要やサービス内容等についてお伝えします。

なお、「医療保険制度における訪問看護」の運営基準等は、前回ご紹介した「介護保険制度における訪問看護※」とほぼ同じ仕組みとなりますので、相違点を中心にお伝えします。

【令和3度改定対応】介護保険制度における訪問看護とは

また令和4年度診療報酬改における運営に関する改定事項も合わせてご紹介します。

医療保険での訪問看護の利用者とは

医療保険が適用される利用者とは、介護保険制度の訪問看護適応外の者であって、 疾病、 負傷等により居宅において療養を受ける状態にある方です。

医療保険での訪問看護の利用条件

医療保険での訪問看護の利用条件として、以下の年齢や条件で区分を設けています。

① 40歳未満(0~39歳)の方

医師が訪問看護の必要性を承認した方

② 40歳以上~65歳未満で16特定疾病以外の方

医師が訪問看護の必要性を承認、かつ16特定疾病(末期がんや関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症など)の対象ではない方。※16特定疾病の対象であっても、要支援・要介護に該当しない方

③ 65歳以上で要支援・要介護の認定を受けていない方

医師が訪問看護の必要性を承認、かつ要支援・要介護に該当しない方

※厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方

要支援・要介護の認定を受けた方であっても、末期がんや多発性硬化症、重症筋無力症など、厚生労働大臣が定める20の疾病に該当する場合は、医療保険を利用して訪問看護を受けることが可能です。

厚生労働大臣の定める20疾病

厚生労働大臣が定める19の疾病と1つの状態
1 末期の悪性腫瘍
2 多発性硬化症
3 重症筋無力症
4 スモン
5 筋萎縮性側索硬化症
6 脊髄小脳変性症
7 ハンチントン病
8 進行性筋ジストロフィー症
9 パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ三以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る。))
10 多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症及びシャイ・ドレーガー症候群)
11 プリオン病
12 亜急性硬化性全脳炎
13 ライソゾーム病
14 副腎白質ジストロフィー
15 脊髄性筋萎縮症
16 球脊髄性筋萎縮症
17 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
18 後天性免疫不全症候群
19 頸髄損傷
20 人工呼吸器を使用している状態

また、終末期や退院直後など、医師が週4日以上の訪問看護が必要と判断した場合に発行される特別訪問看護指示書が出た場合も、医療保険の適用対象となります。さらに、負担額が高額となった場合には、高額療養費制度が利用可能です。

医療保険制度における訪問看護ステーションの開設者とは

都道府県知事(または指定都市・中核市市長)から介護保険法の指定居宅サービス事業者として指定を受けた訪問看護事業者は、みなし指定で健康保険法の指定訪問看護事業者とみなされます。

介護保険法には6年ごとの更新制度が導入されており、この更新を怠ると、健康保険法の指定事業者の資格が失われることとなります。

医療保険制度における訪問看護従事者とは

保健師、助産師、看護師、または准看護師を常勤換算で2.5人以上確保し、その中で1人は常勤職員となります。さらに、理学療法士、作業療法士、または言語聴覚士を適切な数で配置することができます。

ただし、これらのリハビリテーション専門職は精神科訪問看護の従事者としては該当しません。

医療保険制度における訪問看護の管理者とは

常勤の保健師、助産師(健康保険法の訪問看護に限る)、または看護師が管理者となります。

基準省令第3条の3※において、管理者は「適切な指定訪問看護を行うために必要な知識及び技能を有する者でなければならない」と規定されています。そのため、管理者としての資質を確保するためには、関連機関が提供する研修などを受講することが望ましいとされます。

また、管理者には訪問看護計画書・報告書の指導監督や、訪問看護に関連する設備・備品などの衛生管理にも努めなければなりません。職員の健康状態の管理も同様に重要であり、特に感染から守るためには使い捨ての手袋などの対策を講じます。

※厚生労働省:指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準

医療保険制度における訪問看護の内容

在院日数の適正化や在宅看取りの推進から、がん末期の緩和ケアなど医療ニーズの高い在宅療養者への訪問看護がますます重要視されています。同様に、重度障がいを持つ子どもたちへの訪問看護も福祉サービスとの連携が求められています。

看護だけでなく、利用者の状況に応じて、適切な数の理学療法士、作業療法士、または言語聴覚士が配置され、訪問看護の枠組み内でリハビリテーションなどが行われます。

訪問看護の利用開始時や利用者の状態の変化等にあわせて定期的な訪問により評価を行い、療法士等が提供する内容も含めて訪問看護計画書や訪問看護報告書を作成します。

助産師のサービスとしては、医師の指示に基づき、褥婦や新生児の在宅療養者にも訪問看護が行われます。統合失調症等精神科疾患の在宅療養者に対しては、医療保険の訪問看護が提供されます。

医療保険制度における訪問看護の利用までの手順

利用者はまず、(1)訪問看護ステーションまたは主治医に訪問看護の利用を申し込みます。その後、(2)主治医の診察の結果、訪問看護指示書が交付されます。次に、(3)利用者が訪問看護計画書に同意し、最終的に(4)訪問看護が導入されます。

導入後は、実施状況を報告するために、密に主治医と連携をとる必要があります。

令和4年度診療報酬改における運営に関する改定事項

令和4年度診療報酬改定において、訪問看護事業所が業務継続に向け、取り組まなければならないこととして、以下の策定・実施が義務づけられました。

(1)業務継続計画(BCP)の策定

訪問看護事業者は、感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する訪問看護の提供を継続的に実施するための, および非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下「業務継続計画」という)を策定し,当該業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない。

業務継続計画に記載する項目

<感染症に係る業務継続計画

1.平時からの備え(体制構築・整備、感染症防止に向けた取り組みの実施、備蓄品の確保等)

2.初動対応

3.感染拡大防止体制の確立 (保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等)

〈災害に係る業務継続計画〉

1.平常時の対応 (建物・設備の安全対策、電気水道等のライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)

2.緊急時の対応 (業務継続計画発動基準、対応体制等)

3.他施設および地域との連携

(2)職員の研修・訓練の実施

訪問看護事業者は、看護師等に対して業務継続計画について周知し、同時に必要な研修(年1回以上※新規採用時は別に行うことが望ましい)および訓練(年1回以上)を実施しなければなりません。訓練においては、机上を含めた実施手法は問われますが、机上および実地での実施を適切に組み合わせながら行うことが重要です。

(3)定期的な業務継続計画の見直し

訪問看護事業者は、定期的に業務継続計画を見直し、必要に応じて業務継続計画の変更を行うものとします。(令和6年3月31日まで経過措置)

まとめ

今回は、医療保険制度における訪問看護をテーマにその概要やサービス内容等についてお伝えしました。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

※本記事は、作成時の最新の資料や情報をもとに作成されています。詳細な解釈や申請については、必要に応じて最新情報を確認し、自治体等にお問い合わせください。