自立支援医療制度における訪問看護ステーションの関わりとは(公費)

自立支援医療とは、心身の障がいを治療するために必要な医療費の自己負担を軽減し、地域での治療が適切に継続されるように支援する公費負担医療制度です。

この制度は病院や診療所への通院だけでなく、訪問看護を利用している方も対象となります。

今回は、訪問看護における自立支援医療(精神通院医療・更生医療・育成医療)制度の関わりについて概要から自己負担額、手続き方法等をお伝えします。

自立支援医療制度とは

自立支援医療制度は、神疾患や身体に障害を抱えているなど長期の治療や通院が必要となる患者の経済的な負担を軽減するために作られた公費負担医療制度です。

従来、障害や年齢によって更生医療、育成医療、精神通院医療の3種類に分かれていましたが、平成18年4月から自立支援医療に一本化されました。

自立支援医療の種類と対象者

1.更生医療

身体障害者福祉法第4条※に規定する18歳以上で身体障害者手帳が交付されている肢体不自由、視聴覚障害、心臓・ 腎臓・小腸・免疫機能等の内部障害のある方で、永続する障がいに対し、その障がいを除去・軽減する手術等の治療を目的とした医療制度

※身体障害者福祉法


2.育成医療

児童福祉法第4条第2項※に規定する18歳未満で身体に障害を有する児童で、肢体不自由、視聴覚障害、心臓・腎臓・小腸・免疫機能等内部障害のある方、精神科の病院または診療所に通院することを目的とした医療制度

※児童福祉法


3.精神通院医療

精神保健福祉法第5条※に規定する精神障害及び当該精神障害に起因して生じた病態に対して病院又は診療所に入院しないで行われる医療(通院医療)が必要な方に対する医療制度

※精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

自立医療支援制度の負担限度額

自立支援医療の対象者が医療サービス等を利用した場合、本人負担は原則1割となり、負担限度額(月額)が設けられます。

自己負担額は、外来・入院の区別はなく、収入によって段階的に分かれる仕組みとなります。

所得区分 負担限度額
一定
所得以下
生活保護世帯 [生活保護]
負担0円
市町村民税非課税
本人収入:80万円以下
[低所得1]
負担上限月額:2,500円
市町村民税非課税
本人収入:80万円以上
[低所得2]
負担上限月額:5,000円
中間
所得層
市町村民税
33,000円未満
(年収約290~400万円未満)
[中間所得層1]
負担上限月額:医療保険の自己負担限度額
負担上限月額:5,000円 ※1の場合
負担上限月額:5,000円 ※2の場合
市町村民税
33,000円以上
235,000円未満
(年収約400~833万円未満)
[中間所得層2]
負担上限月額:医療保険の自己負担限度額
負担上限月額:10,000円 ※1の場合
負担上限月額:10,000円 ※2の場合
一定
所得以上
市町村民税
235,000円以上
(年収約833万円以上)
[一定所得以上]
公費負担の対象外
(医療保険の負担割合・負担上限額)※3
負担上限月額:20,000円 ※2の場合

※1 令和6年3月31日までの経過的特例措置


※2 高額治療継続者(「重度かつ継続」)に該当する場合


※3 一定所得以上については自立医療支援制度の対象外になります。1割負担は適用されず、医療保険と同じ3割負担となります。但し、一定所得以上においても高額治療継続者(「重度かつ継続」)に該当する場合、自立支援医療の支給対象となります。(令和6年3月31日までの経過的特例措置)


※自立支援医療の「重度かつ継続の一定所得以上」及び「育成医療の中間所得」の区分については、令和3年3月31日までの経過的特例とされていましたが、令和6年3月31日まで延長されました。

参照元:厚生労働省:自立支援医療の経過的特例について

「重度かつ継続」に該当するケースとは

自立医療支援制度において「重度かつ継続」の範囲であると判断されれば、自己負担額の減免措置があります。「重度かつ継続」に該当するケースは、下記になります。

(1)精神通院医療の場合

精神通院医療の対象は、統合失調症、感情障害(気分障害)、うつ病、てんかん、認知症などの脳機能障害、薬物関連障害(依存症など)の患者であり、または精神医療において一定以上の経験を有する医師が、継続的かつ集中的な治療が必要と判断した方となっています。


(2)更生医療・育成医療の場合

更生医療・育成医療は、腎臓機能、小腸機能、免疫機能障害のある患者を対象としています。

これらの疾患名にかかわらず,精神,更生, 育成において医療保険の多数該当者で高額な費用負担が継続する者となっています。

自立支援医療の対象となるサービスとは

各都道府県知事が指定した自立支援医療機関においては、自立支援医療制度を利用することが可能です。この制度は、病院や診療所だけでなく、訪問看護ステーションも対象となります。

自立支援医療制度の対象となるサービスは以下のとおりです。

・病院

・診療所

・薬局

・訪問看護ステーション

訪問看護で自立医療支援制度を利用するためには、都道府県知事に対して所定の手続きを行い、自立支援医療の指定医療機関としての指定を受ける必要があります。

自立支援医療制度の手続き

自立支援医療を受けるためには、「自立支援医療受給者証」と「自己負担額管理票」が必要です。まず、主治医に自立支援医療の対象になるか相談し、その後市役所などで自立支援医療の手続きを行います。

自立支援医療の申請の窓口は、住所地の市町村役所です。手続きに必要な書類は以下の通りですが、市町村によっては若干の違いがあるため、事前に問い合わせておくと良いでしょう。

・自立支援医療診断書
・健康保険書
・市町村民税の課税状況がわかるもの
・申請書(印鑑)
・自立支援医療受給者証(再申請・更新申請の場合)
・個人番号(個人番号カードなど)

また、申請時に「重度かつ継続」の申請を合わせて行う場合には、医師の意見書が必要な場合があります。

育成医療が認定されると、「育成医療受給者証」と自己負担額の上限を明記した「自己負担上限額管理票」が自宅に届きます。

受給者証には、利用する医療機関や訪問看護事業所、薬局などの事業所名が記入されており、それ以外の病院や訪問看護、薬局などを利用する際にはあらかじめ手続きが必要になります。

自立支援医療を利用する際には、上限額管理票を病院や薬局に持参し、そこで支払った自己負担額を記入して捺印してもらいます。訪問看護を受けた場合も同様です。

自立支援医療を利用する際には、上限額管理票を病院や薬局に持参し、そこで支払った自己負担額を記入して捺印してもらいます。訪問看護を受けた場合も同様です。

上限額に達した場合には、それ以降の自己負担分は支払わなくてもよいことになります。なお、手続きを行わずに利用したときには医療保険の一般請求となるため、注意が必要です。

新規申請の場合は、申請日から利用可能

自立支援医療費の新規申請の場合、利用開始は申請日から可能ですが、自立支援受給者証が届くまでに1ヶ月以上かかるため、早めの申請が必要です。

また、すでに医療機関で自立支援医療費の申請をしている方でも、新たに訪問看護を利用する際には追加申請が必要です。

自立支援受給者証の更新

受給者証の有効期限は1年間であり、毎年の更新手続きが必要です。

更新手続きは市役所で行い、受給者証に記入されている期日の3か月前から手続きが可能です。主治医には、有効期限の3か月前から申請用紙に記入してもらうことができます。

更新の申請に必要なものは、受給者証の原本と申請書(印鑑)です。毎年の更新が必要ですが、診断書の提出は2年に1回となります。

なお、受給者証に記入されている内容(住所、保険、医療機関など)に変更が生じた場合は、変更届出が必要です。

まとめ

今回は、訪問看護における自立支援医療(精神通院医療・更生医療・育成医療)制度の関わりについて概要から自己負担額、手続き方法等をお伝えしました。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

※本記事は、作成時の最新の資料や情報をもとに作成されています。詳細な解釈や申請については、必要に応じて最新情報を確認し、自治体等にお問い合わせください。