在宅ケアの質を高める!訪問看護師に求められる情報収集力

訪問看護は、利用者の日常の健康管理から看取りに至るまで、多岐にわたるサービスを提供します。

在宅で行われる訪問看護サービスは、生活の場であり、病院とは異なり、さまざまな職種やサービス担当者が別々の場所で働きながらも連携して、利用者や家族の生活に関わります。

この中で、訪問看護師は医療的な支援だけでなく、生活上の問題にも深く関与する役割を担っています。そのため、関連する機関や職種間での円滑な情報共有や役割調整が重要です。

そのため、訪問看護師は日頃から利用者や家族だけでなく、主治医、医療機関、ケアマネジャー・居宅介護事業所、その他在宅サービス関係者・機関からの幅広く情報収集を行う必要があります。

本コラムでは、訪問看護における情報収集をテーマにその重要性や関係各所との関係、連携方法などについてお伝えします。

訪問看護サービス開始時の情報収集

まず、訪問看護サービス開始時の情報収集について考えてみましょう。

訪問看護サービスは、公的保険の対象となります。医療保険か介護保険のどちらかを利用します。

医療保険の場合、医師の判断により、誰でも利用可能で、基本療養費は1日あたり5,500円です。さらにケア文の料金が追加されます。75歳以上は1割負担、70歳未満は3割負担となります。

介護保険は、主に65歳以上で、要介護・要支援認定を受けた人が対象です。自己負担額は原則1割で、要介護・要支援度によって支給限度額と上限回数が異なります。

訪問看護は、通常、医師、ケアマネジャー、または療養者と家族の希望によって導入されます。

依頼を受けた訪問看護ステーションは、利用者の住まいを訪問し、依頼の目的や看護内容、療養者や家族の意向などを確認します。

得られた情報を基にアセスメントを行い、そのニーズに合わせて長期目標、短期目標、問題点、具体的な解決策、さらには利用中の保険・医療・福祉サービスの状況などを記載した訪問看護計画を作成します。

訪問看護のアセスメントで重要なのは、利用者と家族が「在宅でどのような療養生活を送りたいか」という希望を尊重することです。

疾病や障害の治療や医療ケアに優先度を置く一方で、本人や家族が望まない生活を強制することは避けるべきです。

心身の健康状態や障がい、病状だけでなく、その人の思いや希望を理解し、生活全般を観察し、健康を損なう要因や向上させる要因を見つけ、本人や家族が持つケア力を引き出すことが重要です。

また、地域の社会資源として、保健医療福祉サービスや私的なサービスなどの情報を把握し、利用条件や制約なども具体的に知っておくことが必要です。

訪問看護サービスにおける主な情報源とは

訪問看護ステーションは利用者の生活を支えるためには、地域の多職種と連携を図ることがとても重要です。

訪問看護の利用者についての情報は、患者やその家族だけでなく、主治医や医療機関、ケアマネジャーや居宅介護支援事業所、他の在宅サービス関係者や機関から得ることができます。

これにより、利用者の健康状態やニーズ、生活環境などを多角的に把握することが可能です。

では、利用者の情報収集における関係各所との具体的なかかわりについてみていきます。

主治医からの情報収集とかかわり

医師は、利用者の疾病に関する診断・治療を行い、必要に応じて訪問診療や往診を行います。訪問看護が必要な利用者については、主治医が「訪問看護指示書」を訪問看護師に提供します。

「訪問看護指示書」には、利用者の疾病や診断名、介護度、進行度、治療内容(処方薬や医療機器の設定など)、日常生活の自立度、療養上の注意点、リハビリテーションや処置の指示、緊急連絡先などが記載されています。

これに加えて、書面上の情報に加えて、訪問看護を行う上で確認が必要な内容を主治医と直接確認します。例えば、病歴や治療経歴、将来の治療方針や予後の見込み、病状の説明とその理解度、在宅療養の際の課題や注意点などの情報です。

特に、医療機器(酸素吸入、人工呼吸器、点滴など)を使用している場合や、終末期や退院直後のように病状が変動しやすい場合には、治療方針の変更や医療機器の調整、入院の判断など、予想される経過に関する情報を主治医と共有することが重要です。

発熱や疼痛、看取りの状況など、利用者の病状から予想される症状や状況を考慮しつつ、主治医と連携をとりながら対応することが重要です。

病棟看護師からの情報収集とかかわり

入院中から利用者の退院後の生活を予測し、在宅での生活のイメージを持って看護を行うためには、早い段階から病棟看護師と連携する必要があります。退院時のケアカンファレンスに参加したり、退院時共同指導によって病棟看護師から情報を得ることで円滑に看護が継続することができます。

特に、疼痛コントロールや中心静脈栄養などの管理指導が必要な医療ニーズの高い患者が在宅へ移行する際には、療養上の留意点や医療器材の取り扱いなどを訪問看護師が引き継いでおく必要があります。

退院直後から数週間は病状が不安定であり、訪問看護が必要な時期です。訪問看護師が病棟に出向くことで、利用者のセルフケアや他のサービスの導入の必要性を総合的にアセスメントすることができます。

居宅介護支援事業所・ケアマネジャーからの情報収集とかかわり

訪問看護がケアプランに組み込まれることで、介護保険の給付である訪問看護が導入されます。ケアプランには同時に、利用者のケア目標や他の居宅サービスの実施計画も記載されています。

訪問看護計画書は、このケアプランに基づいて作成されることになっており、ケアプランは重要な情報源の1つとなります。さらに、ケアマネジャーとの緊密な連携を通じて情報の交換が求められています。

ケアマネジャーが訪問看護計画書の提供を要求する場合には、提供する義務があります。

介護職員からの情報収集とかかわり

介護職員は、介護福祉士や介護職員初任者研修修了者などで構成され、介護保険法に基づいて利用者の宅を訪問し、日常生活で必要な身体介護や生活支援を提供します。

介護職員は利用者の生活に非常に近い位置にいるため、利用者やその家族に関するさまざまな情報を把握しており、生活上の課題や心身の微細な変化に気づきやすい職業です。

例えば、意識状態の異常、元気がない様子、身体の動きが通常と異なる、発熱や痛みがある、食事量が減少している、排尿や排便に異常がある、皮膚の問題や傷がある、転倒があった、家族からの虐待の疑いなどの情報が該当します。

これらの情報は、介護職員から訪問看護師に連絡や報告を行い、共有することで、利用者の体調の変化や異常を把握する手助けとなります。

また介護サービスの提供者から情報を収集し、看護計画に反映させることも可能です。

たとえば、入浴の介助を行っているホームヘルパーから「入浴後に疲労が激しい」という情報を得た場合、入浴前後のバイタルサインをモニターし、負荷が過度であると判断したら、ケア方法を「清拭(せいしょく)」に変更し、訪問看護師が一時的に介入する可能性があります。

その後、特に予測される問題がないと判断した場合、ホームヘルパーが自主的に清潔保持の介護を行うように調整することもあります。

この調整は、状態の変化を判断し、安定した療養生活へと導くために看護師が行う重要な役割です。ホームヘルパーが介護業務に専念できるように、看護師がサポートすることも含まれます。

他の訪問看護事業所、保健センター、社会福祉協議会などからの情報収集とかかわり

介護保険に関係なく訪問看護が必要な人々について、他の訪問看護事業所、保健センター、社会福祉協議会などから情報を収集することがあります。

例えば、別の訪問看護ステーションから情報提供がある場合、そのステーションは患者の健康状態やケアニーズについて情報を持っているかもしれません。この情報は現状を判断し、今後起こり得る病状や療養生活の変化を把握する際に役立ちます。

また、保健センターや社会福祉協議会などの地域の公的機関からの紹介や情報提供も重要です。これによって、地域全体のネットワークを活用して、訪問看護サービスの必要な人々を特定し、適切なケアを提供することが可能になります。

このような情報収集と関わりは、訪問看護師が単独で行うこともあれば、チーム全体で連携して行うこともあります。地域の医療・福祉サービスの提供者との連携を通じて、利用者のケアがより効果的かつ継続的に行われるように努めていきます。

まとめ

訪問看護の情報収集力は、在宅ケアの質向上に欠かせません。利用者の状態を正確に把握し、関係各所との連携を通じて個別の看護計画を実現します。

主治医、病棟看護師、居宅介護支援事業所・ケアマネジャー、介護職員など、さまざまな情報源と連携を深めることで、安全で質の高い在宅ケアを提供することができます。利用者の健康と生活の質を最大限に尊重するために、訪問看護の情報収集力を磨いていきましょう。

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