訪問看護ステーションでは、自転車や自動車などそれぞれの地域に適した移動手段で利用者宅へ訪問に向かいます。
そのため、日頃からいつ起きてしまうか分からない交通事故のリスクに備えておくことは、とても大切です。
交通事故を防ぐためには、未然の対策が重要であり、適切なポイントを押さえておけば、発生率を軽減することも可能です。
本日は、訪問中に事故が起こった場合の対処方法や交通事故を未然に防ぐためステーションや訪問スタッフが実施すべき方法などについてお伝えします。
安全運転の心構えと心得10カ条
訪問看護の業務では、日常的に移動が必要な環境のため、交通事故や自転車事故など、事故はいつ起きてしまうか分からないものです。
事故を起こさないためにも普段から交通ルールやマナーを守った余裕のある運転を心がけましょう。
まず最初に安全運転の心構えと心得の10か条を説明します。
安全運転の心構えと心得の10か条
1条.人の命の尊さを覚える
安全運転には、なにより人の命を大事に思う心が重要です。
2条.交通ルールを覚えて守る
道路交通法や交通規則を理解し、遵守することは、運転手の重要な履行義務です。
3条.運転は人格が現れる
運転は、運転者の性格や態度が出るものです。自分の性格や人格を理解しておくことが大切です。
4条.集中して運転する
道路状況はいつも変化しています。そのために、絶えず注意力を上げて集中して運転することが重要です。
5条.心に余裕を持つ
ストレスや焦りは運転中によくない影響を与えます。冷静な心を保ち、余裕をもつことが安全運転につながります。
6条.「もしかして運転」を心がける
他の運転者や歩行者の行動を予測し、予期せぬ状況に備える
「もしかして運転」を心がけることが大切です。
7条.心の状態を平静に保つ
運転中の感情のコントロールは事故を避けるために重要です。怒りや不安を抑え、冷静な態度を維持することが必要です。
8条.運転が上手だという過信は禁物
自己過信は事故の危険を高めます。謙虚で慎重な態度を持つことが重要です。
9条.服装と履物が重要
運転するときは、運転しやすい適切な服装や靴を履くことが重要でです。
10条.危険は油断の先に
油断や過信が事故につながることがあるため、周囲の状況を常に注視し、適切な運転態度を保持することが大切です。
訪問中の運転で特に注意すべきこと
訪問看護ステーションは、地域に根差して事業を展開していきます。そのため訪問の移動中にもステーションの一員として常に見られているという意識を持つことも大切です。
ルールやマナーを守った丁寧な運転を心がける
訪問看護ステーションの名前が書かれた車両での速度違反や一時停止違反等は、事業所の評判を落としてしまいます。
訪問車に乗る際は、仕事であることを意識し、地域の住民に迷惑をかけないような振る舞いを常に取る必要があります。
公道に駐車するときは、駐車許可証を表示する
公道に車を駐車する場合、必ず駐車許可証を表示し、指定された時間と場所に駐車しましょう。駐車許可証を持っていても、指定時間や場所以外に駐車すると違反となります。
指定時間外の場合は、コインパーキングなどを利用するように心掛けましょう。
訪問中の自動車事故発生時の対応
安全運転に努めることが大切ですが、不幸にも事故に遭ってしまったときは、どういった対応を取ればよいのでしょうか。
一連の流れに沿って説明します。
(1)事故の当事者になった場合
1.事故の続発防止処置
まずは安全を確保しましょう。他の交通を妨げないように車を安全な場所に移動させます。これにより、追加の事故や危険を防ぎます。
2.負傷者の救護
もし事故で負傷者がいる場合、速やかに救急車を要請し(通常は119番)、救急隊の到着まで可能な限りの応急手当を行います。負傷者の安全と健康を最優先に考えましょう。
3.警察への通報 ( 110番)
事故が発生したら、警察に通報する必要があります。通常は110番にかけ、事故の場所、負傷者の数、負傷の程度、物損の程度などの詳細情報を提供します。警察の介入が事故処理や保険請求に関連するため、正確かつ適切な情報提供が重要です。
(2)事故の被害者になった場合
1.警察への通報
事故被害者として、事故の程度が軽い場合でも、警察に通報しましょう。交通事故証明書の発行手続きが必要な場合があり、これは後の保険請求や法的手続きに必要です。
2.医師の診断を受ける
事故の際に外傷がなくても、医師の診断を受けることが重要です。内部の怪我や痛みが後から出ることもあるため、健康状態を確認し、必要な治療を受けるためです。
3.加害者の確認
事故の加害者の情報を確認しましょう。氏名、住所、勤務先、そして可能であれば免許証や車検証などの詳細情報を収集します。これらの情報は後の保険請求や法的手続きのために必要です。
(3)事業所責任者への報告・連絡
事故が発生した場所に事業所責任者が直接赴くか、指名された代理者が現場に向かいます。これは事故の詳細を確認し、適切な対応を確保するためです。
もし事故が訪問中に発生した場合、事業所責任者はその後の訪問の調整を行います。
(4)状況の確認、記録
訪問看護の訪問中に事故が発生した場合、以下のの要点に注意して状況を確認し、適切な記録を取る必要があります。
1.日時、場所、事故の状況
事故が発生した日時と場所を正確に記録し、事故の状況や経緯についても詳細に記録します。これは後の調査や証拠提出のために重要です。
2.相手の身元の確認
事故の相手について、氏名、住所、連絡先、および車の登録番号などの情報を確認します。これは保険請求や法的手続きに必要な情報です。
3.目撃者の確保
もし事故の目撃者がいれば、彼らの情報を記録し、必要に応じて目撃者に同行をお願いするか、連絡先を聞いておきます。目撃者の証言は事故の経緯を裏付けるために重要です。
事故現場での注意点
事故現場では、誠意をもって対応し、口約束や示談には慎重に対処することが重要です。
自動車事故の場合、事故の大きさによっては、相手側から示談の提案があることがあるかもしれませんが、業務中であることを説明し、警察・事業所への報告を行うようにしましょう。
1.事故現場から立ち去らない
事故が発生した場合、絶対に事故現場から立ち去ってはいけません。警察への通報や事故処理が必要なため、現場にとどまり、事故の詳細を確認しましょう。
2.安易に謝罪しない
謝罪は事故の責任を認める行為であるため、慎重に行動する必要があります。ただし、自分が加害者である場合は誠意をもって謝罪することが適切です。
3.示談には応じない
事故直後に示談の提案があっても、即座に応じないようにしましょう。一度合意した示談内容は後から変更できないため、十分な検討とアドバイスを受けることが重要です。
4.念書などの取り交わしも行わない
口頭での合意や文書の取り交わしは、後の法的手続きや保険請求に影響を与える可能性があるため、行わないようにしましょう。証拠となる情報は警察の報告書にまかせましょう。
訪問中の交通事故を予防するために
訪問看護ステーションにおける交通事故防止対策は、組織全体としての取り組みが重要です。以下では、事業所全体で取り組むべき事故予防対策について説明します。
(1)事業所内で安全運転や事故対応の訓練を実施する
事業所で、従業員に定期的に安全運転の研修を行い、道路交通法や標識の意味など、安全な運転の基本を復習させ、安全運転についての意識を高めましょう。
(2)交通事故対応マニュアルを整備する
事故が発生した場合の初期対応をスタッフに普及させ、また交通事故の予防・対応のために「交通事故対応マニュアル」を整備し、車や訪問バッグに携帯可能な位置に保管し、必要な際に迅速に参照できるようにしましょう。
(3)事故相手の情報メモシートの準備
訪問車の中に、事故相手の最低限必要な情報である名前・住所・電話番号・仕事先・車等の種類・ナンバー等を項目ごとに記入できるメモの準備をしておくと情報の洩れを少なくできます。
(4)地域の交通事情の把握と交通事故防止マップの作成
「ここの道路は雨の日は滑りやすい」、「この道路は夕方は子どもが多いから注意が必要」、「この道は道幅が狭いから、遠回りだけどこっちを回る」といった交通事故のリスクが高い箇所を選び、同時に交通事故防止マップを作成します。
(5)日頃から自動車や自転車をしっかりと点検する
車両の安全な運転状態を確保するために、定期的に点検や整備を実施します。タイヤの摩耗、空気圧、ブレーキの効き具合など、安全性に影響を及ぼす要因についても注意深く確認することが重要です。
(6)ドライブレコーダーの取り付けを検討する
ドライブレコーダーを設置することで、事故現場の記録を取るだけでなく、従業員の運転様子も録画できます。これにより、従業員が安全な運転を実践しているかどうかを確認できます。
大切なのは余裕を持って行動すること
訪問看護において時間の管理は大切ですが、時間に追われてしまうことで焦り、事故を起こすことがないようにするためのリスク管理も大切です。
経営者・管理者は、スタッフに、心に余裕を持ち、安全に訪問するように伝えるとともに、事故防止のために以下の点を考慮することも重要です。
・十分な休憩時間を設け、過度な疲労を防ぐ
・適切なスケジュール管理を行い、運転時間や訪問時間を余裕をもって設定する
・道路交通法の遵守を徹底し、安全運転を実践する
・天候や交通状況を考慮して訪問計画を調整し、リスクを軽減する
スタッフ自身の健康管理も重要です。
健康に起因した交通事故は、運転手の生活習慣や勤務環境が原因となって引き起こされます。
健康を管理・向上するためには、食事、運動、休息などの要素を重点的に管理・改善することが大切です。訪問看護師や療法士自身も、日常生活でこれらの健康管理に注意することが重要です。
自身の健康状態を確認するためには、特定の機器やスマートフォンアプリを使うことも役立ちます。
まとめ
今回は、訪問中に事故が発生した場合の対処方法や交通事故の予防に関するステーションや訪問スタッフが実施すべき方法についてお話ししました。
安全運転を心がけることが重要ですが、不幸にも事故に巻き込まれた場合、適切な対応が速やかに行えるよう、日常的に対処方法や事業所の手順を確認することが大切です。
また、自身の運転の癖に気付きづらいことがあります。事業所内で相互にアドバイスし合う文化を育てることも重要です。
※訪問看護の訪問ルート管理については、こちらの記事も参考にしてみてください。