令和6年度の介護報酬改定において、訪問看護におけるターミナルケア加算の評価が引き上げられました。
今回は、6月1日から施行される訪問看護におけるターミナルケア加算の算定要件や変更の背景などについて詳しくお伝えします。
訪問看護のターミナルケア加算の内容と今回の変更点
訪問看護における「ターミナルケア加算」とは末期がんなど厚労省が定める疾患の利用者に対して死亡日および死亡日14日以内に2日以上訪問した場合に、死亡月につき算定できる加算です。
診療報酬上(医療保険)でこの加算に対応するのが「訪問看護ターミナルケア療養費」となります。
※訪問看護ターミナルケア療養費(医療保険)についてはこちらの記事も参考にしてみてください。
今回の介護報酬改定では、介護保険の訪問看護で提供されるターミナルケアと医療保険で提供されるターミナルケアの内容が同様であることを踏まえて、単位数を変更されることになりました。
訪問看護等におけるターミナルケア加算の単位数
これまで | 改定後 |
---|---|
ターミナルケア加算 2,000単位/死亡月 |
ターミナルケア加算 2,500単位/死亡月(変更) |
なお、ターミナルケア加算の算定要件等の変更はありません。
ターミナルケア加算の算定要件
(1)24時間対応の環境整備
ターミナルケアを受ける利用者へ24時間連絡、訪問看護ができる環境にしておくこと。
(2)死亡日前後の訪問回数
死亡日、死亡日前14日間以内に2日以上訪問し、ターミナルケアを行っていること。
(3)主治医との連携と家族との
主治医と連携を取り、ターミナルケアに関わる計画や体制について、利用者および利用者の家族に十分な説明を行い、合意を得ていること。
(4)必要な記録の保持
ターミナルケアを行うにあたって、利用者の身体状況の変化など必要な記録をしておくこと。
(5)ガイドラインの遵守
厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を踏まえて、利用者の意思決定を基本とした医療やケアを医療・ケアチームが提供すること。
参照元:厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」
ターミナルケア加算の注意点
ターミナルケア加算は、通常は利用者の死亡月に適用されます。最終訪問日が月末であっても、死亡日が翌月など、ターミナルケアを最後に提供した日の月と利用者の死亡月が異なる場合でも、加算は死亡月に算定できます。ただし、この適用は指示期間中に限られます。
※介護予防訪問看護(利用者が要支援者)の場合、ターミナルケア加算の対象外です。
訪問看護のターミナルケア加算が変更された背景とは
次に今回の介護報酬改定において訪問看護のターミナルケア加算が変更された背景についてみていきましょう。
厚生労働省の資料「訪問看護(改定の方向性)」では今回の改訂の背景として訪問看護における看取りのニーズが増加していることが挙げられています。
訪問看護ステーションにおけるターミナルケア利用者数
ターミナルケア加算(介護保険)の算定数
ターミナルケア療養費(医療保険)の算定数
ターミナルケアの算定数は、介護保険、医療保険ともに増加傾向であり、特に、令和3年度は急増しています。
また介護保険と医療保険の訪問看護いずれにおいても同様のケアを提供していることが伺えます。
訪問看護で死亡前14日間で実施したケア内容
利用者の死亡前14日間で実施したケア内容では、「清潔援助」が最も多く83.6%、次いで「家族の療養指導」が76.9%、「排泄管理」が72.8%でした。
また訪問看護事業所へのヒアリングによると、介護保険の訪問看護においても、重症度の高い利用者のターミナルケアが増えていると報告されています。
介護保険の訪問看護のターミナルケアを行う利用者や状態の変化
・自宅での看取りを希望し、看取り目的で訪問看護を利用する者が増加している
・心不全、腎不全の利用者の看取りが増えている
・症状によっては、在宅で強心剤・昇圧剤の持続点滴をする例も増えた
・慢性閉塞性肺疾患の利用者は呼吸苦が出現することが多く、オピオイド(麻薬性鎮痛薬)を使用することもある
参照元:厚生労働省「訪問看護(改定の方向性)」
このような状況・背景を踏まえ、訪問看護の利用者に対する看取り体制の強化を目的に訪問看護のターミナルケアの見直しが行われました。
まとめ
今回は、6月1日から施行される訪問看護におけるターミナルケア加算の変更背景や算定要件などについてお伝えしました。
本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。
※本記事は、作成時の最新の資料や情報をもとに作成されています。詳細な解釈や申請については、必要に応じて最新情報を確認し、自治体等にお問い合わせください。