我が国は今、少子高齢化の進行と医療・介護費の増大という構造的課題に直面しています。これに伴い、公的保険制度に依存した事業運営の限界が徐々に明らかになりつつあります。
こうした環境変化の中で、訪問看護ステーションが持続的に発展していくためには、“制度の枠内での対応”に加え“地域の健康づくりに貢献する自立型経営”へと発想を発展させ、「公的保険外」=自費サービス領域への戦略的参入を進めることが鍵となっていきます。
国は2050年に向けて77兆円規模のヘルスケア・介護市場創出という大きなビジョンを掲げ、新しい産業領域としてのヘルスケア市場拡大を後押ししています。
本コラムでは、この国の動向を踏まえながら、訪問看護ステーションが果たすべき新たな役割と、「訪問看護ならではの強み」を活かした「公的保険外」=自費サービス領域での成長戦略の方向性を探ります。
- 1 国の目標と、訪問看護に求められる新たな役割
- 2 訪問看護ステーションによる「公的保険外サービス」展開の実例
- 3 1.【再生医療・先端医療分野での新しい役割】
- 4 2.【個別化された「QOL向上」支援と生活サポート】
- 5 3.【予防・健康増進サービスによる「未病」アプローチ】
- 6 4.【企業向け・法人提携型ヘルスケア事業】
- 7 5.提携医療機関との連携による検査・データ活用型サービス
- 8 訪問看護ステーションが「公的保険+保険外サービス」の二軸を持つメリット
- 9 (1)利用者(患者・家族)にとってのメリット
- 10 (2)経営(ステーション運営)にとってのメリット
- 11 (3)地域・社会にとってのメリット
- 12 77兆円市場を見据えた「公的保険外サービス」5ヶ年ロードマップ
- 13 さいごに
国の目標と、訪問看護に求められる新たな役割
日本は今、少子高齢化と医療・介護費の増大という課題に直面しています。
高齢者が増える一方で、それを支える現役世代が減少しており、公的保険制度の持続可能性が大きく揺らぎ始めています。
具体的には、下記の図にあるように、65歳以上を「支えられる側」とした場合、2017年には現役世代2.1人で1人の高齢者を支えていたのに対し、2065年には1.3人で1人を支えるという、非常に厳しい構造に変化すると予測されています。
しかし、75歳以上を「支えられる側」としてみると、2017年は現役世代5.1人で1人を支えていたのに対し、2065年でも2.4人で1人を支えることが可能です。
このデータが示すのは、「75歳まで健康で自立して生活できる人を増やすこと」こそが、社会の持続可能性を保つ最大の鍵であるということです。
こうした中で、訪問看護ステーションには、新たな役割の拡大が求められています。
これまでの「在宅医療・介護の担い手」から一歩進み、「予防・健康支援」や「地域の健康寿命延伸」を担うヘルスケア・プラットフォームへと進化することが期待されています。
その方向性を後押ししているのが、経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課が掲げる目標です。
同課は2025年4月に発表した「これからの健康経営について」の中で、公的保険外のヘルスケア・介護市場を、2050年までに77兆円規模(2020年の24兆円から53兆円増)へ拡大するという国家ビジョンを示しています。
この巨大な市場の拡大は、訪問看護ステーションにとっても大きなチャンスです。
公的保険中心の事業モデルから一歩踏み出し、健康寿命の延伸に貢献する自費サービス領域へ戦略的に展開することが、これからの成長の鍵となるでしょう。
(出所)経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課「これからの健康経営について」
訪問看護ステーションによる「公的保険外サービス」展開の実例
前述の通り、日本のヘルスケア市場は今、「高齢化の進展」「医療の高度化」「健康寿命の延伸」という3つの潮流のもとで、大きな転換点を迎えています。
公的保険サービスだけでは応えきれない多様で複雑なニーズの増加により、「公的保険外サービス」市場が急速に拡大しているのです。
この流れを、訪問看護ステーションが“経営の安定化”と“持続的成長”のチャンスとして掴むためには、「医療の専門性」と「地域密着の信頼性」という2つの強みを最大限に生かし、自費領域における独自サービスを戦略的に構築することが不可欠です。
以下では、訪問看護ステーションが実現可能な「公的保険外サービス」の具体的な展開例を紹介します。
1.【再生医療・先端医療分野での新しい役割】
再生医療や自由診療などの先端医療分野は、今後のヘルスケア市場の中核を担う成長領域です。
訪問看護は、この最先端医療を地域社会に定着させる“在宅インフラ”としての役割を果たすことができます。
(1)再生医療・細胞治療の術前~術後サポート
提携クリニックと連携し、幹細胞治療や免疫細胞療法などの術前・術中・術後ケアを一貫して支援。
術中は看護師が立ち会い、バイタル管理や薬剤投与補助を実施。術後は創部ケアや感染予防、体調変化の早期発見を行い、在宅回復を支えます。
また、こうした高度医療を支えるための看護師のリスキリング(再教育)も鍵となります。
先端医療に対応できる知識・技術を習得し、心理的支援や生活指導まで一体的に行うことで、「医療の継続性」と「生活の質の両立」を実現します。
(2)自由診療(美容・健康領域)の在宅サポート
高濃度ビタミンC点滴、メディカルダイエットなどの自由診療メニューを、自宅で安全に受けられるよう支援。
体調管理、副作用の早期発見、生活習慣アドバイスを行うことで、治療効果と継続性を高めます。
(3)高度医療機器の専門管理サービス
人工呼吸器やIVH、ドレーン管理など、高度医療機器を使用する利用者に対し、公的保険ではカバーしきれない回数・時間の範囲で自費サポートを提供。
トラブル対応や家族指導を強化し、安心・安全な在宅療養を支えます。
2.【個別化された「QOL向上」支援と生活サポート】
訪問看護の本質は、「医療」だけでなく「生活」を支えること。公的保険の制約を超え、利用者の“人生の質”を支える特別なケアを提供します。
(1)看取り期(ターミナルケア)の充実
家族の負担を軽減しながら、夜間の見守りや苦痛緩和を柔軟に実施。「最期を自宅で迎えたい」という想いを叶えるサポート体制を整えます。
(2)レスパイトケア(家族支援)
家族の不在時に医療的ケアを含めた長時間の見守りや生活支援を提供。介護家族の休息を支えるサービスとして需要が高まっています。
(3)外出・旅行時の付添い看護
医療的処置が必要な方(喀痰吸引、インスリン注射など)の外出・旅行・冠婚葬祭への同行サポート。社会参加の促進とQOL向上を実現します。
(4)オーダーメイド生活支援
看護師監修の衛生管理された調理サービス、服薬見守り、専門フットケアなど、医療視点からの生活支援で、個々の健康維持をきめ細かく支えます。
3.【予防・健康増進サービスによる「未病」アプローチ】
「病気になる前から支える看護」へ。
予防・未病分野は77兆円市場の中核領域であり、訪問看護が最も得意とする生活支援・指導スキルが生きる分野です。
(1)保険終了後の継続リハビリ
介護保険や医療保険のリハビリ期間終了後も、「機能維持」ではなく「機能向上」を目指す利用者の目標に合わせ、自由度の高い継続的なマンツーマンリハビリを提供します。
(2)認知症・フレイル予防プログラム
地域コミュニティやシニア向けマンションと提携し、高齢者を対象とした認知症予防のためのブレインフィットネス(脳トレ)、専門的な運動や、管理栄養士と連携した栄養指導を組み合わせた専門プログラムをパッケージで提供します。
(3)健康リスク評価と個別介入
訪問看護のノウハウを活かし、地域の高齢者に対し、フレイルや認知機能低下のリスクアセスメントを自費で行い、その結果に基づいた個別指導と介入計画を提供します。
4.【企業向け・法人提携型ヘルスケア事業】
企業の健康経営や従業員のウェルビーイング(Well-being)への関心が高まっています。
そこで訪問看護の専門知識を活用し、働く世代やその家族の健康を支援する次のようなサービスを福利厚生として提供することで、企業の生産性向上と従業員満足度向上に貢献し、新たな法人顧客の獲得を目指します。
(1)オンライン健康相談・メンタルケア支援
企業と契約し、ストレスチェック後の高ストレス者や、生活習慣病予備軍の従業員に対し、専門の看護師による個別オンライン健康相談(生活習慣改善、睡眠指導、メンタルヘルスケア)を提供します。
(2)オフィス訪問型リフレッシュ/予防プログラム
看護師、理学療法士が企業へ訪問し、デスクワーカー向けの肩こり・腰痛予防のストレッチ指導、簡易健康チェック、疲労回復のためのアロマセラピーなどを提供し、疾病予防と集中力向上を支援します。
(3)従業員向け健康セミナーの定期開催
企業のニーズに応じて、予防医学や生活習慣病管理、メンタルヘルスなど、多岐にわたるテーマで定期的なセミナーを企画・実施します。 オンライン・オフライン両方に対応し、全従業員の健康リテラシー向上を図ります。
定期健康セミナープログラムのタイトルやテーマ例は以下のような内容です。
テーマ例(1)
タイトル:生活習慣病予防・改善セミナー(予防的アプローチ)
テーマ:「働く人のための『血糖値・血圧』マネジメント術」
内容:保健師・管理栄養士と連携し、健診結果の見方から、今日からできる食事・運動の具体的な改善策を指導。 疾病リスク低減に直結する知識を提供します。
テーマ例(2)
タイトル:女性特有の健康問題セミナー(問題を顕在化)
テーマ:「フェムテックを活用した更年期・月経困難症対策」「女性の健康とキャリアの両立支援」 内容:ライフステージ特有の健康課題(PMS、妊娠・不妊、更年期障害など)に焦点を当て、正しい知識と対処法を提供し、働く女性のQOL維持を支援します。
(4)介護離職防止のための家族支援
親の介護に直面した従業員に対し、訪問看護の専門家が個別に相談をお受けします。介護保険制度の使い方や地域の支援サービスの紹介、仕事と介護を両立するための具体的な計画づくりをサポートします。
また、「看取り」や「医療的ケア」など、家族介護で不安の多いテーマを取り上げたセミナーを実施。介護に関する知識不足や心理的な負担を軽減し、安心して介護と仕事を両立できる環境づくりを支援します。
(5)経営層向けエグゼクティブ・ヘルスケア
企業の経営者や幹部層を対象に、職場や自宅への訪問を通じて、専門的で高度な健康支援サービスを提供します。
従来の健康診断や生活習慣改善の枠にとどまらず、最新の再生医療技術を活用した体内修復・機能回復プログラムを導入。これにより、細胞レベルでの健康維持、老化防止、疲労回復、免疫力強化を実現し、経営層の高い健康水準と活力(バイタリティ)の維持をサポートします。
結果として、経営者や幹部が常に最良のパフォーマンスを発揮できる状態を保ち、企業経営の安定と成長に貢献します。
具体的なサービス内容は以下の通りです。
・専任看護師による定期的な健康チェックや精密検査結果の解説・フォローアップ
・個別栄養指導の実施
・再生医療・抗加齢医療の最新知見を取り入れた高精度な予防的アセスメント(例:テロメア長測定、遺伝子リスク解析など)
・提携クリニックによる再生医療(幹細胞治療など)の情報提供
・治療後の自宅での体調管理・フォローアップ
専属看護師が一貫してサポートすることで、経営層が安心して健康を維持できる体制を整えています。
(6)メディカルダイエット・美容点滴の管理
医師の指導のもと、メディカルダイエットの服薬管理や副作用チェック、さらに高濃度ビタミン点滴などの美容・疲労回復点滴の体調管理を、職場や自宅でサポートします。
これにより、従業員の健康維持やパフォーマンス向上を支援し、企業の健康経営の推進に貢献します。
(7)専門的な薄毛治療のサポート
提携クリニックの処方に基づく治療(内服薬・外用薬)の継続的な服薬・使用指導、経過観察を自宅で行います。
多忙な従業員でも治療を途切れさせず、効果を最大化できるようサポートすることで、外見面の改善に伴う自信や活力が高まり、日常業務での集中力や生産性向上にもつながります。
5.提携医療機関との連携による検査・データ活用型サービス
(1)自宅での血液・尿検体採取サービス
提携する健診機関やクリニックの指示に基づき、通院の負担が大きい方や、忙しい方が対象の高度な自費健康診断(高精度ながんリスク検査、遺伝子検査、特殊な血液検査など)について、看護師が企業や自宅を訪問し、検体(血液、尿など)の採取を代行し、医療機関へ提出します。
(2)専門看護師による高度な健康モニタリングサービス
利用者の睡眠パターン、活動量、血圧、血糖値などのデータを継続的に収集・モニタリングします。看護師がこれらのデータを分析し、提携医師へ報告するとともに、利用者に個別化した健康改善フィードバック(食事、運動、服薬調整に関する助言など)を自費で提供します。
(3)褥瘡・創傷のリスク評価とモニタリング
訪問看護の専門知識を活かし、自費で定期的に皮膚状態の詳細な評価(画像記録含む)を行い、褥瘡や難治性創傷の早期発見と悪化予防のためのアドバイスや、高度な予防ケアを提供します。
(4)遺伝子検査等の結果に基づく個別指導
提携機関で実施された遺伝子検査や腸内細菌叢検査などの結果に基づき、看護師・保健師が自宅で個別指導を行います。 検査結果を生活習慣や食生活に落とし込み、パーソナライズされた予防計画の実行を支援します。
このように、訪問看護師が「データに基づく個別支援」を提供することで、医療機関との連携を深化させ、より科学的・予防的な地域ヘルスケアモデルを実現します。
訪問看護ステーションが「公的保険+保険外サービス」の二軸を持つメリット
訪問看護ステーションが、公的保険サービスに加えて保険外サービスを提供する二軸のビジネスモデルを持つことは、これからの時代において非常に重要な戦略です。
この二軸体制によって、利用者にとっての利便性が高まるだけでなく、事業としての持続可能性や地域社会への貢献度も大きく向上します。
ここでは、「利用者」「経営」「地域社会」の3つの視点から、その具体的なメリットを整理します。
(1)利用者(患者・家族)にとってのメリット
1.サービスの柔軟性が高まる
公的保険には訪問時間や内容の制限がありますが、保険外サービスを組み合わせることで、延長訪問・夜間対応・生活支援など、必要に応じた柔軟な支援が可能になります。これにより、「必要なときに必要な支援」を継続的に提供できます。
2.自宅や職場で先端医療を受けられる
幹細胞培養上清液やNMN点滴などの予防医療的ケアを、自宅や職場で受けられるようになります。病院に通う手間を減らしつつ、高度医療を身近に体験できることで、生活の質(QOL)や満足度が大きく向上します。
3.健康寿命の延伸に寄与
再生医療や先端的治療を受けることで、疾病予防や老化抑制、機能回復が促進され、「介護を必要としない期間=健康寿命」の延長が期待できます。
(2)経営(ステーション運営)にとってのメリット
1.経営の安定化と収益基盤の多角化
公的保険サービスは報酬改定の影響を受けやすいですが、保険外サービスは自由な価格設定が可能です。高付加価値サービスを提供することで、公的制度に依存しない収益の柱を確立できます。
2.高い利益率の確保
再生医療の術後管理やエグゼクティブ・ヘルスケア、長時間の自費ケアなど、専門性が高く希少性のあるサービスは、保険サービスより利益率が高く設定しやすく、財務体質の強化につながります。
3.顧客層の拡大
従来の要介護者や医療保険対象者に加え、「予防」「未病」層、企業の健康経営層、富裕層のエグゼクティブなど、多様な顧客層を獲得できます。
4.専門職の働きがいとキャリア形成の促進
再生医療サポートや高度な自費検査、企業向け健康セミナーなどに参入することで、看護師・理学療法士・保健師などが専門性を活かし、新しい分野を開拓できます。
5.従業員の離職率低下と優秀な人材獲得
オーダーメイドサービスを提供できることで職務満足度が高まり、離職率の低下や優秀な人材の獲得につながります。
6.報酬体系の柔軟化
保険外サービスの収益を活用し、スキルや貢献度に応じたインセンティブや評価制度を導入しやすくなり、職員の待遇向上に寄与します。
7.地域におけるヘルスケア・プラットフォームとしての地位確立
クリニック、企業、シニア向け施設など多様なパートナーとの連携が生まれ、地域全体を支える「予防から看取りまで」のヘルスケア・プラットフォームとしての地位を確立できます。
8.健康寿命延伸への貢献
「未病」や「予防」に特化したサービスを提供することで、地域住民の要介護化を防ぎ、国の掲げる健康寿命延伸に直接貢献できます。
9.ブランディングの強化
再生医療サポートやエグゼクティブケアなど先進的サービスを展開することで、専門性や革新性を評価され、地域でのブランド力が向上します。
(3)地域・社会にとってのメリット
1.保険支出の抑制と社会的貢献
先端医療や再生医療を活用することで疾病の進行を防ぎ、入院や施設入所を減らせます。これにより、公的保険の支出抑制に寄与し、地域での「防ぐ・再生する」ケアの推進役となります。
2.地域包括ケアの要としての存在価値
医療・介護・自費サービスを一体的に提供できる訪問看護ステーションは、地域包括ケアの中心的存在となります。利用者の生活に最も近い専門職チームとして、制度の枠を超えた支援を提供し、地域に安心で持続可能なケア体制を築くことができます。
77兆円市場を見据えた「公的保険外サービス」5ヶ年ロードマップ
経済産業省が掲げる、2050年に77兆円規模の公的保険外ヘルスケア・介護市場創出という目標。これに伴い、訪問看護ステーションには、専門性と地域ネットワークを活かした新たなビジネスモデルの構築が期待されています。
しかし、保険外サービスの導入には、市場理解、法的整備、人材育成など段階的な戦略が不可欠です。ここでは、初期の「基盤構築・試験導入」から最終的な「市場リーダー確立」までを目指す、5年間の実行ロードマップを示します。
【1年目】基盤構築と市場理解フェーズ
目的:現状把握と方向性の明確化
・公的保険外サービスの法的枠組み・運営ルールを調査
・地域の潜在ニーズ(利用者・家族・企業・自治体)をリサーチ
・専門医(再生医療、抗加齢医療等)との信頼できる連携体制を構築
・スタッフへの意識醸成研修(保険外事業の意義・倫理・価格設定の考え方)を実施
・小規模トライアルを実施(例:自費リハビリ、夜間見守り、点滴など)
・自費サービス対応の会計・契約・記録体制を整備
・人材育成プログラムを体系化し、保険外分野の専門看護師を育成
【2年目】企業・法人向けサービスの試験導入フェーズ
目的:新市場(働く世代・企業)の開拓と収益源の多様化
・地域企業や団体に、健康経営・メンタルヘルス・介護両立支援などのサービスを提案
・企業との業務委託契約(健康相談、セミナー、出張健康チェックなど)を開始
・看護師によるオンライン健康相談窓口を試験運営
・自費サービス対応の法人営業体制を整備し、パンフレット・提案資料を作成
【3年目】サービス拡大と多角化フェーズ
目的:保険外サービスの本格展開と差別化戦略の推進
・企業・個人双方に提供できるパッケージ型商品を開発
・成果データを基に、自治体・医療機関・企業との共同プロジェクトを企画
【4年目】事業安定化とブランド確立フェーズ
目的:経営基盤の強化と信頼性の確立
・保険外事業部門を独立採算制で運営し、収益構造を明確化
・品質管理・顧客満足度評価制度を整備し、第三者評価を取得
・自費サービスの価格体系・契約書類・マニュアルを標準化
【5年目】市場リーダー確立と地域ブランド化フェーズ
目的:地域モデルの確立と全国展開への布石
・保険外サービスの成功モデルを地域で標準化し、「地域健康支援ステーション」としてブランドを確立
・地域行政、医師会、企業と共同で包括的健康支援プロジェクトを展開
・成果を学会・メディア・業界フォーラムで発信し、全国的ロールモデルとして地位を確立
さいごに
2050年には、77兆円規模に達すると予測される公的保険外ヘルスケア・介護市場は、訪問看護ステーションにとって大きな成長のチャンスです。
介護保険制度が始まった2000年に掲げられた「病院から在宅へ」というスローガンは、今後は「治療から予防へ」「公的保険から保険外サービスへ」と国全体がシフトすることが予測されます。
こうした変化の中で、医療専門職としての信頼性と地域に根ざしたネットワークを活かし、「公的保険外」=自費サービス領域に戦略的に参入することが、競争優位性の鍵となります。
制度にとらわれない柔軟な発想と、現場で培った専門性を融合させることで、利用者のQOL(生活の質)の向上と、経営の安定化・収益構造の多角化が実現できます。
公的保険外市場への参入は、単なる事業拡張にとどまらず、再生医療など先端分野を通じて健康寿命の延伸に貢献する、新たな社会的使命を担うことでもあります。
こうした取り組みを担う訪問看護ステーションは、地域医療の未来を見据えた持続可能な経営モデルへと進化し、地域とともに成長しながら、新たな価値を創造する存在へと発展していくでしょう。