日本の訪問看護の歴史を知ろう!高齢化で高まる在宅医療のニーズ

日本における訪問看護の歴史を学ぶことは、社会における在宅看護のニーズを知るために大切なことです。

この記事では、訪問看護の歴史や背景をお話ししたいと思います。

現在の日本には、訪問看護が絶対的に必要

日本の医療の最大の特徴は、「国民皆保険」に支えられたものであること。国民皆保険とは、みなさんもご存じの通り、すべての日本国民がそれぞれの健康保険に加入し、自由に医療を受けられる制度。世界に誇れる、大変素晴らしい制度です。

2000年には、これまでの国民皆保険に加え、介護保険制度もスタートしました。これで、日本の医療、介護を取り巻く制度は充実したのですが…。

現在、日本の高齢化率は上昇の一途をたどっており、医療や介護の財源が逼迫するようになってしまったのです。

要するに、日本社会では、ケアを提供するための「お金の問題」が起こってしまっているのです。

今後も在院日数は短縮され、在宅医療や在宅介護の重要性が高まってくると予想されています。

つまり、訪問看護ステーションのニーズがますます高まってくると言えるでしょう。

訪問看護が生まれた歴史と背景

それではここで少し、訪問看護の原点に立ち戻ってみましょう。そもそも、訪問看護はいつ生まれたのでしょうか?

訪問看護の始まりは、1920年頃、民間組織の「慈善看護婦会」が、患者を看護するために、病院や家庭に看護師を派遣したことが始まりと言えるでしょう。

現代でもコロナ感染症が流行したものの、日本人の3大疾病はガンや心疾患、脳血管疾患です。しかし1920年代、つまり大正時代やそれ以前の日本では、チフスやコレラなどの感染症で命を落とす人が大勢いたのです。

感染症患者の看護には隔離が必要です。感染症患者の看護のために派遣されたのが、慈善看護婦会の看護師たちだったのです。

1920年代後半になると、日本赤十字病院や聖路加国際病院などの看護師が、ボランティアの一環で、母子や被災者を訪問して看護を行うようになりました。

時代は昭和にうつり、1960年頃になると、日本の公衆衛生環境の改善に伴って、社会における感染症患者は減ってきました。そのかわり、脳血管障害などによる麻痺や寝たきり高齢者の増加がクローズアップされるようになりました。

この頃の訪問看護では、在宅で介護を受けている高齢者へのケアや家族への指導が主に行われました。

1982年には「老人保健法」が制定され、1983年からは退院後の患者への訪問看護が医療保険の適応になりました。

これまでは、ほぼボランティアのように行われてきた訪問看護でしたが、医療保険の診療報酬に反映されるようになったのです。訪問看護のニーズが高まり、価値が認められたからにほかなりません。

その後、訪問看護の対象は、高齢者だけでなく、精神科患者やがん、難病患者へも広がっていきました。

そして、1996年(平成8年)、看護師基礎教育課程において、「在宅看護論」が新たにカリキュラムに加わったのです。

これは、社会での在宅医療のニーズの高まりを受け、すべての看護師が在宅看護の知識を習得しておかなくてはならないと考えられたからです。

このように、訪問看護は時代を追うごとに社会から求められ、その地位を確立してきたのです。

訪問看護ステーションの現状

訪問看護ステーションは、全国に約12,000ヵ所あります。1事業所当たりの常勤換算従事者数は、7名程度となっています。そのうち、5名程度が看護師という内訳です。

訪問看護ステーションが提供するサービスは、病状観察、療養指導、内服管理、リハビリテーション、日常衣生活の介助、精神障がいや認知症のある人への援助など、多岐にわたります。

さらに最近は、ターミナルケアのニーズも高まっています。近年の日本では、医療制度が整うにつれて病院で亡くなる人が増えましたが、「やはり自宅で最期を迎えたい」と願う人が増えてきました。その願いを叶えるのが訪問看護ステーションです。

終末期医療の観点からも、訪問看護ステーションの重要性はますます高まってきています。

訪問看護ステーションとして指定を受けるには

さて、日本社会においてニーズの高まっている訪問看護ですが、訪問看護ステーションとして開業するには、介護保険法に基づき、「指定居宅サービス事業者」の指定を受ける必要があります。

指定を受けるためには、運営母体、管理者、訪問看護従事者、訪問看護ステーションの施設・設備・備品等の細かなチェックを受けなければなりません。

訪問看護ステーションの経営者になるには、看護の質だけでなく、指定や経営のことも念頭においておかなければならないのです。

まとめ

人々が安心して地域社会で暮らすためにも、重要な役目を持つ訪問看護ステーション。訪問看護ステーションの開業は、地域社会への貢献にもなります。

「もっとよりよい看護を提供したい」と思う看護師のみなさん、ぜひ、この分野に挑戦してみませんか。

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