【イベントレポート】「この管理者についていきたい」と思われるチームのつくり方 ―「ルール」を基盤に、管理者の牽引力を高める―

―「ルール」を基盤に、管理者の牽引力を高める―

2026年9月25日(金)17:00より、「いろいろナース」主催の訪問看護管理者向けオンラインセミナーを開催いたしました。

「スタッフが指示を待たないと動けない」「人によって対応にばらつきがある」「自分の考えがチームに浸透しない……」といった悩みを抱える管理者は少なくありません。

本セミナーでは、自らも現場と経営のトップとして圧倒的な実績を出されている青柳 裕士 氏(RERISE株式会社 代表取締役/ALBA八王子 代表・管理者)を講師にお迎え、「人(根性論や個人の資質)」ではなく「ルール(仕組み)」でチームを動かすという、明日から使える組織デザインの極意を惜しみなく語っていただきました。

悩みの原因は「管理者の力量」ではなく「判断基準の不在」

多くの管理者が「もっと自分がしっかり指示を出さなければ」「自分のマネジメント力が足りないのでは」と自分を責めがちです。

しかし、今回の講義で最初に投げかけられたのは、「そもそもチームとして共通の判断基準がないから動けないのでは?」という視点でした。

例えば、あるご利用者への対応についてスタッフAとスタッフBで対応が異なる場合、責めるべきはスタッフの意識ではなく「この場合はこう対応する」というルールが言語化されていないことにあります。

今求められているのは、管理者が手取り足取り指示を出して動かすチームから、スタッフが一定の基準に沿って自ら判断し、動けるチームへの転換です。

ルールは縛るものではなく「安心して判断できるお守り」

「ルールを細かく決めると動きにくくなるのでは?」と思われがちですが、本セミナーで提案されたルールはスタッフの自由を奪うものではありません。むしろ「迷ったときに戻れる安全網」です。

チームでルールを共有する5つのメリット

1.判断が早くなる(迷う時間が減る)

2.スタッフによる対応のばらつきが減る(サービスの質が均一化)

3.新人教育が格段にしやすくなる(指導マニュアルになる)

4.管理者への確認・問い合わせが減る(管理者の負担軽減)

5.チーム内に共通言語ができる(心理的安全性の向上)

講義では、訪問看護の現場で今すぐ役立つ「5つの必須ルール」について、具体例とともに解説されました。

現場の「曖昧」をなくす! 5つの具体例とルールづくりのポイント

1. ご利用者への対応基準

接遇の標準化: 「丁寧に対応する」という抽象的な理念ではなく、「訪問時は名前を呼んで体調確認から始める」「退室時は本日の様子と次回訪問予定を伝える」といった行動レベルまで落とし込みます。

「今日はやりたくない」と言われたら: 説得する・すぐ諦めるなどの個人差をなくし、「①理由の確認 → ②代替案の相談 → ③チーム共有とケア見直し」というフローをルール化します。

ご家族からの増回・追加依頼: 個人の判断でその場での約束や断りを禁止し、「まずは傾聴し、管理者へ報告・調整する」を徹底します(※スタッフ自身を守るルールになります)。

クレーム初動: 反論せず「まず話を聞く → 事実確認 → 管理者報告 → チーム検討」という誰が対応しても同じ初動が取れる仕組みを構築します。

緊急時対応: バイタルや意識状態のチェックリストを整備し、「何を確認してどこへ連絡するか」を明確にします。

2. 災害時の健康管理

平時からの可視化: 人工呼吸器や在宅酸素など電源が必要なご利用者について、平時からバッテリー、避難方法、搬送先などを整理しておきます。

訪問可否の判断フロー: 災害時に「訪問すべきか」を管理者がその場で悩むのではなく、確認項目(道路状況・ご利用者の緊急度・スタッフの安全など)と連絡順序(電話 → SMS → 家族・緊急連絡先)をあらかじめ型化しておきます。

3. ご利用者情報・個人情報の管理

SNS・写真撮影: 個人端末での撮影禁止や、業務用端末の利用範囲など「たぶん大丈夫」を排除した明確な基準を設けます。

ご家族への情報開示: 家族であっても「本人の意向確認」「共有範囲の確認」を必須とします。

記録の質: 「調子悪そうだった」ではなく、「10時訪問時37.8℃、倦怠感あり。水分摂取促し30分後37.5℃。管理者報告のうえ経過観察」といった「次の人が正しく判断できる記録」をルール化します。

4. コミュニケーション(報連相)

報告基準のクリア化: 急変・事故・トラブル・予定外の変更は「必ず即時報告」、状態変化や家族の要望は「当日チーム共有」など、優先度ごとに分類します。

報告の型: 「血圧が高かったです」ではなく、「いつ・現在の状態・何を行ったか・何をしてほしいか(指示・相談)」をセットで伝えるトレーニングを行います。

ツール使い分け: 急変は「電話+記録」、トラブルは「電話/チャット+記録」、通常の申し送りは「記録のみ」といった連絡手段のルールを定めます。

5. 安全管理(ヒヤリハット・再発防止)

ヒヤリハットの共有: 「事故にならなかったからOK」ではなく、「事実の共有 → 原因分析 → 対策策定」のフローを回します。「誰がやったか」ではなく「なぜ起きたか」に着目することが重要です。

注意力だけに頼らない: 「次から気をつけます」で終わらせず、ダブルチェックシートの導入や環境確認の仕組み化など、ハード・システム面で再発を防ぎます。

ルールをチームの文化に育て上げる「6ステップ」

ルールは「作って終わり」では意味がありません。青柳氏からは、ルールを現場に定着させ、チーム文化として根付かせるためのプロセスが提示されました。

【① ルールをつくる】
↓
【② スタッフに共有する】
↓
【③ 教育・研修を行う】
↓
【④ 管理者自身が誰よりも実践する】★最重要
↓
【⑤ 現場で愚直に繰り返す】
↓
【⑥ 振り返り・改善(アップデート)する】

特に強調されたのは、「管理者自身が一番ルールを守る」という姿勢です。言葉以上に管理者の行動がチームに波及します。「守らせる」のではなく「まず管理者が実践する」姿勢こそが信頼の基盤となります。

今日から始める!「3行ルール」作成ワーク

セミナー内では、参加者が自ステーションで明日から実践できる簡単なステップが紹介されました。

3行ルールの作り方

STEP 1: 最近、スタッフによって判断や対応が分かれた場面を1つ思い出す。

STEP 2: 何がどう違ったのかを整理する。

STEP 3: 本来何を基準にすべきだったかを考え、「この場合は、こうする」という3行程度の簡潔なルールに落とし込む。

まずは「一番困っていること」を1つだけ選んでルール化してみる。この小さな一歩が、自走するチームづくりのスタートラインです。

おわりに:「管理者が頑張る」から「チームが動く」へ

「この管理者についていきたい」と思わせる力とは、決して強烈なカリスマ性やカリスマ的リーダーシップだけではありません。

「迷ったときに戻れる基準がある」
「誰が担当しても安心して働ける仕組みがある」

そうした環境を整えてくれる管理者に対して、スタッフは心からの信頼を寄せます。

管理者が一人で全てを抱え込む必要はありません。「ルール」という共通言語をチームに導入し、誰もが安心して力を発揮できるステーションを目指してみませんか?

参加者の声(アンケートより抜粋)

「主体性を求める前に、まず共通の判断基準を揃えることが先決だと痛感しました。」

「対応の違いに悩むたびに自分が間に入って調整していましたが、仕組みで解決するという視点が開眼でした。」

「分厚いマニュアルを作るのではなく、現場で困っている1つの場面から3行ルールを作ってみます!」

講師紹介

青柳 裕士(あおやぎ ひろし) 氏
RERISE株式会社 代表取締役
訪問看護リハビリステーション ALBA 八王子 代表・管理者

高度救命救急センター、ICU、緩和ケア等の臨床を経て訪問看護へ転身。立ち上げ・経営において、開業半年で利用者約170名、月間訪問2,000件超、グループ年商2億1,000万円達成などの実績を持つ。八王子訪問看護師会副会長、東京都訪問看護ステーション協会副支部長などを兼任し、現場・管理・教育の多角的な視点から訪問看護の発展に尽力している。