慢性疾患ケアの鍵は訪問看護にあり!訪問看護師の存在とケアの重要性を再確認しよう

在宅での慢性疾患療養には心疾患、糖尿病、肝臓病などがあり、安定した状態を保つためには服薬などの様々なサポートが欠かせません。

訪問看護は、慢性疾患ケアにおいて利用者の生活をサポートする重要な役割を果たしています。

このコラムでは、慢性疾患についての理解から訪問看護がどのように慢性疾患ケアに取り組んでいるのか、注意すべきポイントや入院リスクの問題について掘り下げていきます。

目次

慢性疾患とは

慢性疾患は、長期間にわたって進行し、持続的な症状や機能の障害を引き起こす疾患のことを指します。

慢性疾患は一般的に治癒が困難であり、病気自体が完全には解消されない場合があります。

代表的な慢性疾患には、

・高血圧

・糖尿病

・心臓病

・慢性呼吸器疾患

・関節炎

・うつ病

などがあります。これらの疾患は、医療管理や生活習慣の改善によって症状を管理することが求められます。

訪問看護の慢性疾患ケアとは

訪問看護ステーションは、慢性疾患の利用者が自宅や地域で安心して暮らせるように継続的なケアを支援しています。

訪問看護師は、患者の状態を把握し、必要なケアを提供するだけでなく、患者との信頼関係を築き、心理的なサポートも行います。患者の生活の質を向上させ、病状の安定と希望する生活の実現をサポートすることが重要な目標となります。

在宅での慢性疾患のケアにける内服管理の重要性

在宅での慢性疾患のケアの基本は、内服管理です。正しい服薬は、病状の安定や予防に不可欠であり、薬物の効果を最大限に引き出すために必要です。

訪問看護師は、適切な服薬を確保するために、患者の服薬スケジュールの確立、薬物情報の提供、動機づけの向上、服薬しやすい環境の整備などが重要な役割を果たします。

(1)薬物情報の提供

訪問看護師は、患者やその家族に対して処方薬に関する情報を提供します。これには、薬物の名称、目的、使用方法、副作用、相互作用などが含まれます。患者が薬物について理解し、その重要性を認識することが動機づけの一部です。

(2)服薬スケジュールの確立

訪問看護師は、患者に適切な服薬スケジュールを提案します。これは、薬物を正確に服用するために、具体的な服用時刻や頻度を決定することを意味します。一般的には、患者の日常の生活リズムや習慣に合わせることが重要です。

(3)服薬の動機づけ

訪問看護師は、患者の服薬の動機づけを高めるためにコミュニケーションや教育を行います。患者に対して、薬物の効果や症状の管理への重要性、疾患の進行を抑制する役割などを説明し、治療への積極的な参加を促します。

(4)服薬しやすい環境の整備

訪問看護師は、患者が服薬を容易に行える環境を整えることも重要です。例えば、薬箱の整理や薬剤師との連携による簡易包装、服薬リマインダーやアラームの設定、必要な道具や水の提供などが含まれます。

(5)服薬のモニタリングと評価

訪問看護師は、患者の服薬状況をモニタリングし、適切に服薬が行われているか評価します。定期的な訪問を通じて、服薬の頻度や副作用の有無を確認します。

訪問看護の慢性疾患ケアにおいて注意すべきポイント

(1)正しいことであっても押しつけや強制をしない

在宅での慢性疾患のケアにおいて、塩分制限や禁煙などの生活改善の重要性は認識されています。ただし、正しいことであっても、押しつけることは望ましくありません。以下にその理由をいくつか説明します。

1.個別のニーズと状況の考慮

患者は個々のニーズや生活状況を持っています。押しつけることで、患者の意見や状況が無視され、負担やストレスが増加する可能性があります。生活改善は、患者との共有のゴールとして設定されるべきであり、個別のニーズや選択肢を尊重することが重要です。

2.モチベーションと協力の促進

患者のモチベーションと協力は、生活改善の成功に重要な役割を果たします。押しつけや強制は、患者の自主性や主体性を損ない、モチベーションの低下や反発を引き起こす可能性があります。むしろ、患者との協力的な関係を築きながら、情報提供や教育を通じてモチベーションを高めるアプローチが有益です。

3.健康的な関係の構築

押しつけや強制は、患者との信頼関係を損なう可能性があります。訪問看護師は、患者との健康的な関係を築きながら、尊重と共感を示すことが重要です。患者が自らの健康に関心を持ち、主体的に参加することを促すことが目指されます。

4.個別のペースと段階性の考慮

生活改善は、一度に完全に実現するものではありません。患者のペースや段階的な進行に合わせたアプローチが必要です。押しつけることは、患者に負担をかけるだけでなく、挫折感や失敗感を生じさせる可能性もあります。適切なサポートと指導を提供しながら、個々の能力や意欲を尊重することが大切です。

(2)療養者を「患者」としてではなく、「生活者」として捉える

訪問看護の慢性疾患ケアにおいて、療養者を「患者」としてではなく、「生活者」として捉えることは非常に重要です。以下に、その重要性と具体的なポイントについて詳しく説明します。

1.自己の価値観と経験の尊重

療養者は自身の人生や生活において様々な経験を積み重ねてきました。訪問看護師は、その人の価値観や経験を尊重し、ケアの選択や計画に反映させることが重要です。療養者が自分自身の生活に関わる意思決定を行えるようにサポートし、自己決定権を尊重します。

2.コミュニケーションと共感

訪問看護師は、療養者とのコミュニケーションを通じて信頼関係を築きます。療養者の意見や希望を丁寧に聴き、共感し、共に考える姿勢を持ちます。療養者の生活や価値観を理解し、その人にとって重要な要素を把握することで、個別のケアプランを立案する上で有益な情報を得ることができます。

3.ケアの個別化と選択肢の提供

訪問看護師は、一人ひとりの療養者に合わせた選択肢やアプローチを提案し、その人自身ができる範囲で自己管理や生活の質の向上に取り組めるようサポートします。療養者のニーズや目標に合わせてケアをカスタマイズすることで、より効果的かつ意義のあるケアを提供できます。

4.サポートとエンパワメント

訪問看護師は療養者を支え、自己管理能力の向上を促進します。療養者自身が自分の健康と生活に主体的に関わり、自己決定や問題解決ができるようにサポートすることが重要です。訪問看護師は、情報提供や教育を通じて療養者の健康に関する知識やスキルを向上させます。また、適切な資源やサービスへのアクセスを支援し、療養者が自分自身のケアに取り組む力を高める手助けをします。

5.継続的なサポートとフォローアップ

訪問看護師は、療養者との関係を長期的なものと考え、継続的なサポートを提供します。定期的な訪問やコミュニケーションを通じて、療養者の健康状態や生活の変化を把握し、必要な調整やサービスの提供を行います。療養者のニーズに合わせてケアプランの見直しや修正を行い、適切なケアの提供を継続します。

以上が訪問看護師にとって重要なポイントです。療養者を「生活者」として捉え、その人の価値観や生活を尊重し、共に考えながらケアを進めることは、療養者の自己決定権を尊重し、より質の高いケアを提供するために欠かせないアプローチです。

訪問看護師は療養者との信頼関係を築き、継続的なサポートを通じて療養者の自己管理能力を向上させ、より良い生活の実現に貢献します。

高齢者の慢性疾患における病状の流れ

訪問看護は、高齢者の慢性疾患のケアにおいて、急性増悪やターミナル期の段階でも重要な役割を果たします。

高齢者の慢性疾患では、内服管理によってしばらく病状が比較的安定していても、次第に急性増悪が繰り返し起こるようになります。その結果、回復が遅くなり、病状が悪化し、最終的にはターミナルに至ります。

一般的な高齢者の慢性疾患における病状の流れを説明します。

(1)安定期

高齢者の慢性疾患は、内服管理や適切な治療によって一定の安定期を過ごすことがあります。病状が管理され、症状が軽減し、生活の質が改善する時期です。この期間は、慢性疾患の進行を抑制し、病状をコントロールするために重要です。

(2)急性増悪

しかし、高齢者の慢性疾患は徐々に進行し、安定期から急性増悪のサイクルが繰り返されることがあります。急性増悪は、病状が一時的に悪化し、症状や機能の変化が現れる期間です。これは、感染症、身体的ストレス、薬物の変更、活動量の増加、栄養状態の悪化など、さまざまな要因によって引き起こされる場合があります。

(3)回復の遅さと悪化

高齢者の慢性疾患において、急性増悪後の回復が遅くなる傾向があります。免疫力の低下や身体機能の衰えにより、回復が困難になります。また、慢性疾患の進行に伴い、症状や機能の悪化が進行します。身体的な活動や日常生活動作の制限、疲労感、呼吸困難などが増加し、生活の質が低下します。

(4)ターミナル期

高齢者の慢性疾患が進行すると、ターミナル期に至ることがあります。ターミナル期とは、病状が重篤化し、治療が難しくなり、予後が限られている期間を指します。病状の悪化や合併症の発生により、療養者の生活が著しく制約され、終末期のケアが必要になります。

訪問看護師は療養者の状態をモニタリングし、早期の病状変化を把握することで、適切な対応や医療チームとの連携を行います。

また、療養者と家族に対して病状や治療の理解を支援し、療養者の希望や意思を尊重しながらケアプランを調整します。

入院が高齢者にとって大きなリスクとなる理由

急性憎悪をきたすことで病状が悪化した場合、可能であれば在宅でそのまま治療を続けますが、難しい場合は、入院治療が行われます。

しかし高齢者にとって入院は大きなリスクとなります。以下に、入院が高齢者に与える影響や回復までの時間について詳しく説明します。

(1)ADLの低下

入院中は病院の環境や制約された生活スケジュールにより、高齢者の日常生活動作(ADL)が低下することがあります。自己介護能力や身体機能が低下し、入院期間が長引くとADLの回復に時間がかかる可能性があります。特に、ベッド上での安静や制限された身体活動は筋力や運動能力の低下を引き起こすことがあります。

(2)運動不足や筋力低下

入院中は運動機会が限られたり、ベッド上での安静が求められることがあります。このため、筋力や運動能力が低下し、身体の機能回復に時間がかかることがあります。長期の入院では特に、筋力低下や関節の可動域制限などが生じ、リハビリテーションや運動療法の必要性が高まります。

(3)せん妄のリスク

高齢者の一部では入院によりせん妄(一時的な意識の混乱)が引き起こされることがあります。入院中の環境の変化、不眠、栄養状態の変化、疼痛やストレスの増加などが要因として関与しています。長期間の入院ではせん妄のリスクが高まり、回復に時間がかかることがあります。

(4)入院期間の影響

入院期間が短期間(約3日程度)であれば、ADLの低下や身体機能の回復にかかる時間も比較的短く、1〜2週間程度で回復することが多いです。しかし、1か月以上の長期入院では、ADLの回復には3か月から半年以上かかる場合があります。長期間の入院では、身体的な機能低下だけでなく、心理的な影響や社会的な制約も重なり、回復までの時間が長くなることがあります。

以上のように、高齢者の場合、入院はADLの低下や筋力低下、せん妄のリスクなどを引き起こすことがあります。特に長期間の入院では、これらの影響がより顕著に現れ、回復までの時間が長くなる可能性があります。

長期入院を防ぐために、訪問看護が心得るべきこととは

入院は高齢者にとって大きなリスクを伴い、入院期間が長くなるほど回復までの時間も長くなります。

訪問看護師は、慢性疾患ケアにおいて、急性増悪からの回復が遅くなるリスクや病状の悪化に対して、普段の訪問において以下のポイントに注意する必要があります。

(1)食事支援

療養者の栄養状態を適切に管理することが重要です。栄養バランスの取れた食事を提供し、必要な場合には栄養補助食品や経管栄養を検討します。また、食事の嗜好や制限事項を療養者と共に話し合い、その人の生活に合わせた食事支援を行います。

(2)排泄の支援

療養者の排泄管理を適切に行うことも重要です。定期的な排尿や便通の観察、適切なトイレ利用のサポートなどを通じて、排泄の問題を予防し、早期の対応を行います。必要に応じて、専門家との連携や適切な器具の使用も検討します。

(3)睡眠の支援

睡眠の質と量を適切に管理することが重要です。療養者の快適な睡眠環境の提供や睡眠リズムの調整、睡眠障害の予防策の提供などを行います。療養者の生活状況や好みに合わせた睡眠支援を行い、安定した休息を促します。

(4)服薬管理

療養者の正確な服薬をサポートすることも重要です。薬剤の種類やタイミングに応じた服薬リマインダーの提供や、薬の説明・理解の支援を行います。また、療養者や家族に服薬に関する疑問や懸念がある場合は、それに対して適切な情報提供や相談支援も行います。

これらの支援を通じて、訪問看護師は療養者の急性増悪を防ぐために貢献します。療養者の個別の状態やニーズに合わせたケアプランを立て、継続的なモニタリングと適切な介入を行うことが重要です。

まとめ

訪問看護による慢性疾患ケアは、在宅療養において重要な役割を果たしています。慢性疾患とは、長期にわたって持続する状態の疾患であり、その管理とケアには継続的なサポートが必要です。

特に高齢者の慢性疾患においては、病状の流れが重要なポイントとなります。知識やスキルの継続的な学習と共有を通じて、訪問看護の質を向上させましょう。