介護保険と医療保険の公的保険が適用される訪問看護では、一般的に介護保険が医療保険より優先されます。そのため多くの訪問看護ステーションでは介護保険の利用数が医療保険より多いのが現状です。
しかし、近年では末期がん、神経難病、精神疾患、小児、そして医療ニーズの高い在宅療養者などの需要が増加し、医療保険による訪問看護の需要も増えています。
2024年の診療報酬の改定では、介護保険改定には含まれない賃金アップの加算が新設されるなど、医療保険の訪問看護の重要性が示されました。
このような需要の変化や医療保険の重要性の増加を踏まえると、訪問看護ステーションは、これまでの体制や業務の進め方を根本的に改革する必要性があります。
しかし、何をどのように改革すればよいのかという点で迷いが生じ、これまでの経験を基にした改革は容易ではありません。
今回は2024年の診療報酬改定の内容、そしてこれまでの体制や業務の進め方等の変革を進めるためのBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)ついてお伝えします。
- 1 高い伸び率の医療保険の訪問看護利用
- 2 2024年度診療報酬改定における訪問看護の改定項目とは
- 3 (3)緊急訪問看護加算の評価の見直し
- 4 (4)医療ニーズの高い利用者の退院支援の見直し
- 5 (5)母子に対する適切な訪問看護の推進
- 6 (6)管理者の責務の明確化
- 7 (7)虐待防止措置及び身体的拘束等の適正化の推進
- 8 (8)賃上げに向けた評価の新設
- 9 (9)訪問看護指示書の記載事項及び様式見直し
- 10 (10)訪問看護療養費明細書の電子化に伴う訪問看護指示書の記載事項及び様式見直し
- 11 (11)ICTを活用した遠隔死亡診断の補助に対する評価の新設
- 12 2024年診療報酬改定から考える「訪問看護のBPRビジネスプロセスリエンジニアリング)」とは
- 13 (1)人事制度のBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)
- 14 (2)営業活動のBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)
- 15 (3)運営管理のBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)
- 16 まとめ
高い伸び率の医療保険の訪問看護利用
下記グラフにあるように、訪問看護の利用者数の推移では、平成13年から令和元年の伸び率が介護保険が2.9倍に対して、医療保険が5.9倍と高い数値になっています。
さらに、厚生労働省 老健局の発表(令和5年)では、令和3年の介護保険利用が66万9千人、医療保険利用が38万人となり、平成13年からの対比で介護保険3.5倍、医療保険7.7倍と医療保険利用者がさらに高い伸びとなっていることがわかります。
訪問看護利用者数の推移
参照元:厚生労働省「第8回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ令和4年10月31日」
今後も、ますます医療保険の訪問看護ニーズが高まることが推測できます。
2024年度診療報酬改定における訪問看護の改定項目とは
伸び率が高まっている医療保険の訪問看護において、2024年診療報酬改定では、どのような改定項目があるのでしょうか。
令和6年3月5日に厚生労働省保険局医療課より発表された令和6年度診療報酬改定の概要【在宅(在宅医療、訪問看護)】に基づき説明していきます。
今回の改定は、「訪問看護の提供体制」「利用者のニーズへの対応」「医療DXへの対応を含む関係機関との連携強化」が柱となり、概ね以下の11項目となります。
(1)24時間対応体制加算の見直し
訪問看護ステーションにおける持続可能な24時間対応体制確保の推進のために見直しが行われます。
現行 | 改定後 |
---|---|
月1回に限り、6,400円 | 24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取り組みを行っている場合、6,800円 ※上記以外の場合 6,520円 |
※24時間対応体制における看護業務の負担軽減の取組は、以下のような体制です
・ 夜間対応した翌日の勤務間隔の確保
・ 夜間対応に係る勤務の連続回数が2連続(2回)まで
・ 夜間対応後の暦日の休日確保
・ 夜間勤務のニーズを踏まえた勤務体制の工夫
・ ICT、AI、IoT等の活用による業務負担軽減
また、体制整備と家族の同意があることで、24時間対応体制に係る連絡相談を、看護師等以外の職員が受けることができるようになります。
(2)機能に応じた訪問看護管理療養費の見直し
適切な感染管理の下での利用者への対応を評価する観点から、訪問看護管理療養費の評価が見直されます。
月の初日の訪問の【訪問看護管理療養費】見直し
項目 | 現行 | 改定後 |
---|---|---|
機能強化型訪問看護管理療養費1 | 12,830円 | 13,230円 |
機能強化型訪問看護管理療養費2 | 9,800円 | 10,030円 |
機能強化型訪問看護管理療養費3 | 8,470円 | 8,700円 |
1から3まで以外の場合 | 7,440円 | 7,670円 |
機能強化型訪問看護管理療養費1は、専門の研修を受けた看護師の配置の要件化されます。
月の2日目以降の訪問の場合【訪問看護管理療養費】見直し内容
現行 | 改定後 |
---|---|
3,000円/日 | 訪問看護管理療養費1 3,000円/日 |
訪問看護管理療養費2 2,500円/日 |
※訪問看護管理療養費1の基準
訪問看護ステーションの利用者のうち、同一建物居住者に占める割合が7割未満であって、次のイ又はロに該当するものであること。
イ 特掲診療料の施設基準等別表第七に掲げる疾病等の者及び特掲診療料の施設基準等別表第八に掲げる者に対する訪問看護について相当な実績 を有すること。
ロ 精神科訪問看護基本療養費を算定する利用者のうち、GAF尺度による判定が40以下の利用者の数が月に5人以上であること。
※訪問看護管理療養費2の基準
訪問看護ステーションの利用者のうち、同一建物居住者であるものが占める割合が7割以上であること又は当該割合が7割未満であって上記のイ 若しくはロのいずれにも該当しないこと。
(3)緊急訪問看護加算の評価の見直し
緊急の指定訪問看護を適切に提供する観点から、【緊急訪問看護加算】の要件と評価とともに、訪問看護療養費請求書等の記載内容が見直されます。
現行 | 改定後 |
---|---|
2,650円/日 | 月14日目まで 2,650円/日 |
月15日目以降 2,000円/日 |
※これまでの算定要件に加え、以下の内容が追加されます。
緊急に訪問看護を実施した際は、以下が求められます。
・日時、内容及び対応状況を訪問看護記録書に記録する
・加算を算定する理由を訪問看護療養費明細書に記載する
(4)医療ニーズの高い利用者の退院支援の見直し
退院日の利用者の状態及び訪問看護の提供状況に応じた評価を充実させる観点から、退院支援指導 加算の要件を見直されます。
退院支援指導を要する者が退院する際に、看護師等が長時間の訪問を要する療養上の指導を行った場合の条件が以下の通り変更されます。
現行 | 改定後 |
---|---|
1回の退院支援指導の時間が90分を超えた場合に限る | 1回の退院支援指導の時間が90分を超えた場合、または複数回の退院支援指導の合計時間が90分を超えた場合に限る |
(5)母子に対する適切な訪問看護の推進
ハイリスク妊産婦連携指導料の要件の見直し
ハイリスク妊産婦に対する支援を充実する観点から、ハイリスク妊産婦連携指導料の多職種カンファレンスの参加者に、訪問看護ステーションの看護師等が加わります。
乳幼児加算の評価体系の見直し
乳幼児の状態に応じた評価を行う観点から、乳幼児加算の算定区分、算定料について見直しが行われます。
現行 | 改定後 |
---|---|
乳幼児加算 1,500円/日 | 1,300円/日 厚生労働大臣が定める者に該当1,800円/日※ |
※「厚生労働大臣が定める者」に関する条件が以下の通り新設されました。
・超重症児又は準超重症児
・特掲診療料の施設基準等別表第七に該当する疾病等の小児
・特掲診療料の施設基準等別表第八に該当する小児
(6)管理者の責務の明確化
管理者について、指定訪問看護ステーションの管理上支障がない場合には、同時に他の指定訪問看護ステーション等を管理できることとなります。
現行 | 改定後 |
---|---|
指定訪問看護ステーションの管理上支障がない場 合は、当該指定訪問看護ステーションの他の職務に従事し、又 は同一敷地内にある他の事業所、施設等の職務に従事すること ができるものとする | 同一敷地内が条件から削除 |
(7)虐待防止措置及び身体的拘束等の適正化の推進
訪問看護における身体的拘束等の適正化を推進する観点から、指定訪問看護の具体的取扱方針に、身体的拘束等の原則禁止や緊急やむを得ない場合に「身体的拘束等を行う場合における記録の義務」が追加されます。
(8)賃上げに向けた評価の新設
物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応として、訪問看護ステーションスタッフの賃上げを目的とする「訪問看護ベースアップ評価料」が新設されます。
2024年度(令和6年度)にべースアップ+2.5%、2025年度(令和7年度)に+2.0%の賃金上昇を目指すため、訪問看護ステーションに勤務する看護師やその他の医療関係職種(※)の賃金の改善を実施する場合の評価が新設されます。
※訪問看護ステーションにおいてベースアップ評価料を用いた賃金上昇の対象となるのは、看護師、保健師、准看護師、看護補助者、理学療法士、作業療法士、精神保健福祉士、言語聴覚士などの職種です。
訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)の新設
訪問看護ステーションにおいて、勤務する看護職員その他の医療関係職種の賃金の改善を実施している場合の評価が新設されます。
(新) 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ) 780円(月1回)
訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)の新設
訪問看護ステーションであって、勤務する看護職員その他の医療関係職種の賃金のさらなる改善を必要とする訪問看護ステーションにおいて、賃金の改善を実施している場合の評価が新設されます。
(新) 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)
イ | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)1 | 10円(月1回) |
ロ | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)2 | 20円(月1回) |
ヌ | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)10 | 100円(月1回) |
ル | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)11 | 150円(月1回) |
ソ | 訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)18 | 500円(月1回) |
(9)訪問看護指示書の記載事項及び様式見直し
令和6年6月から訪問看護レセプトのオンライン請求が開始されることを踏まえ、より質の高い医療の実現に向けてレセプト情報の利活用を推進する観点から、訪問看護指示書及び精神科訪問看護指示書の記載事項に「疾病名コード」の記載が必要になります。
(10)訪問看護療養費明細書の電子化に伴う訪問看護指示書の記載事項及び様式見直し
居宅同意取得型のオンライン資格確認等システムを通じて 利用者の診療情報を取得し、当該情報を活用して質の高い医療を提供することに係る評価が新設されます。
<算定要件>
訪問看護医療DX情報活用加算(新設)50円/月
<算定要件>
電子資格確認により利用者の診療情報を取得した上で、訪問看護の実施に関する計画的な管理を行っていること
<施設基準>
・電子情報処理組織の使用による請求を行っていること。
・電子資格確認を行う体制を有していること。
・医療DX推進の体制に関する事項及び質の高い訪問看護を実施するための十分な情報を取得して訪問看護を行うことについて、訪問看護ステーションの見やすい場所に掲示していること。
・上記について原則として、ウェブサイトに掲載していること。
(11)ICTを活用した遠隔死亡診断の補助に対する評価の新設
医師が行う死亡診断等について、ICTを活用した在宅での看取りに関する研修を受けた医療機関の看護師が補助した場合の評価として、一定の算定要件と施設基準のもと、在宅ターミナルケア加算に遠隔死亡診断補助加算が新設されます。
<算定料>
遠隔死亡診断補助加算 150点
参照元:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【在宅(在宅医療、訪問看護)】」令和6年3月5日版
参照元:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【賃上げ・基本料等の引き上げ】」
伸び率が高まっている医療保険の訪問看護は次の図にある対象者となります。
医療保険と介護保険の訪問看護対象者のイメージ
参照元:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【在宅(在宅医療、訪問看護)】」令和6年3月5日版 P40 図
2024年診療報酬改定から考える「訪問看護のBPRビジネスプロセスリエンジニアリング)」とは
前述の2024年の診療報酬改定は、医療保険の訪問看護が増加するこれからの時代において、看護師の働き方の改革、賃金の見直し、効率的な業務フローの構築、質の向上と専門性を高める体制づくり、提供サービスの拡充を促す内容となっています。
これらを実現するためには、訪問看護ステーションは、これまでの社内制度や業務プロセスなどを抜本的に見直して再構築を図ることを検討する必要があります。
これは、業務の部分的な見直しを行う業務改善ではなく、抜本的な改革に有効なBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)によって効率化や、飛躍的な向上を目指すこととなります。
BPRとは
診療報酬改定から考える訪問看護のBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)を解説するにあたり、まず、BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)とは何かについて説明します。
BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)は、通常、業務改革として知られており、組織や制度を根底から見直し、目的や目標に向けて非効率な業務フローを大きく改革するなど、全体の業務プロセスを再設計する取り組みです。
時代の変化に伴い、求められるサービス、働く人々の意識が変化します。
また従来の手法が通用しなくなったり、変革が求められる場合があります。
これらの変化に対応するために、業務プロセスを根本から見直すBPRは、きわめて有効的と言われています。
訪問看護ステーションにおいても、BPRを適切に行うことで、サービスの質が向上し、業務の効率化が図られ、利用者満足度が高まります。
また、看護師等スタッフの働き方も改善され、リソースの有効活用が可能となり、
組織としての競争優位性が高まります。
BPRの流れ
BPRの流れは一般的には検討、分析、設計、実施、モニタリングと評価の5つのステップで進めます。
B(1)検討
まず、改善点をトップから示し、スタッフの視点も収集し、それぞれの役割や立場から議論を通じて共通の目的・目標を設定します。このプロセスにより、課題や問題点の共通認識が得られ、方向性が明確化されます。
B(2)分析
現状のプロセスにおける課題や問題点を洗い出します。課題解決に向けた施策を明確にすることが重要です。
B(3)設計
課題や問題点に基づいて、改革に向けた戦略や方針を決定します。ビジネスプロセスの標準化やアウトソーシングの検討も行います。問題点を優先順位付けし、具体的なプロセスを設計します。組織全体で共通認識を持ちながら設計を進めます。
B(4)実施
目的、ゴールを社内で共有し、プロジェクトを進行します。定期的な確認と修正を行いながら、短期的な目標を設定します。
B(5)モニタリング・評価
業務のモニタリングと効果測定を行い、問題があれば修正を行います。関係者での情報共有を通じて、改善の成果を評価します。
2024年の診療報酬改定から考える訪問看護のBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)とは
それでは、2024年の診療報酬改定の内容を受けて、訪問看護ステーションが、どのような項目でBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)を実施することが適切なのでしょうか。
ここでは、訪問看護ステーションにおいて実施を勧めたいBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)について、以下3つの視点からお伝えしていきます。
(1) 人事制度のBPR
(2) 営業活動のBPR
(3) 運営体制のBPR
(1)人事制度のBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)
2024年の訪問看護の診療報酬改定では、物価上昇への対応、看護師の負担軽減、人材確保の必要性を踏まえた内容が多く含まれています。このことから、訪問看護ステーションでは、人事制度のBPRは重要となります。
2024年の訪問看護の診療報酬改定に伴う、人事制度のBPRでは以下のポイントが挙げられます。
1. 賃金制度の見直し
今回の診療報酬改定で新設された、訪問看護ベースアップ評価料は、介護報酬には適用されておらず、医療保険に限った評価基準です。
政策としても医療保険の訪問看護の高評価を示唆しており、訪問看護ステーションが医療保険も重要視し、利用者を増やすことで賃金を上げやすくなります。
診療報酬改定で新設される訪問看護ベースアップ評価料を踏まえ、訪問看護ステーションのスタッフの賃金体系を見直します。新しい報酬体系では、医療スキルや業績に基づいて設計し、公平でモチベーションを高める内容にすることで、質の高い看護師の採用にも役立てます。
2. 採用基準の設定
これまで、設定していた採用基準では、今後主流となる訪問看護領域に対応できなくなる可能性があります。
専門性や技術、倫理観やチームワーク、医療知識、コミュニケーションを重視した採用基準を設定します。また、土日祝日の訪問要員の採用も検討します。
3. 教育環境の整備
スタッフの専門性向上と、ICTの活用能力の向上を目指した教育プログラムを強化します。これにより、ニーズの高い在宅看護技術の習得と、情報システムの利用が促進され業務効率の向上が期待されます。
4. 管理者業務の見直し
今回の診療報酬改定では、管理者の役割と責任が再定義されてます。これまで行っていた管理者業務を見直して、マネジメントを重視した新たな業務領域を策定します。
5. オンコール体制の変革
今回の診療報酬改定により、オンコール体制では勤務間隔の確保や業務負担の軽減と適切な対応が求められます。看護師以外のオンコール対応の体制整備やICTの活用も検討します。
(2)営業活動のBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)
医療保険の訪問看護では、利用者が入院したり、亡くなることで急に利用者が減ることが少なくありません。訪問看護ステーションの経営において、利用者の安定は、利益の確保につながります。
そのために継続的な営業活動を行う必要があり、診療報酬の改定に伴う営業活動のBPRは重要です。
2024年の訪問看護の診療報酬改定に伴う、営業活動のBPRは、以下のポイントが挙げられます。
1. 病院の地域医療連携室・退院支援室への営業強化
退院支援指導の見直しは、医療ニーズが高い患者の退院が増加し、訪問看護の介入によるスムーズな在宅移行の必要性が増すことを示唆しています。
このことから病院の退院患者の紹介につながるよう、地域医療連携室や退院支援室に在籍する、看護師、医療ソーシャルワーカーへの営業活動を定期的に行うプロセスを確立することが大切です。
2. 属人的な営業から脱却した営業の仕組み化
診療報酬改定に沿って、管理者やスタッフの業務が見直され、営業を含めステーション内の役割分担が変更する可能性があります。
そのため、どのスタッフであっても、同様の成果が出せるよう、属人的な営業から脱却し営業を仕組み化することが大切となります。
仕組み化には、以下の項目の明確化と整備があります。
・営業先リスト
・種別のチラシやパンフレット
・トークスクリプト
・営業結果や進捗の管理シート
・営業頻度
3. ウェブサイトの改定
今回の診療報酬改定により、訪問看護ステーションは、原則として、重要事項をウェブサイトに掲載しなければならなくなります。
これは、ステーションのウェブサイトやSNSによる発信の重要性を意味すると考えられます。これまでのような内容では、ステーションの強みや対応力、提供サービスのバリエーションが伝わらない可能性があります。
今後は、ウェブサイトの内容を改定して、に以下のような項目を細かく掲載して、定期的に更新できる体制整備を検討する必要があります。
・各種加算の算定の有無
・精神看護や小児看護、緩和ケア等、特定の看護分野の看護師紹介
・医療ニーズへの対応事例
・緊急時の訪問とオンコール体制
・土日祝日の対応
・家族支援の実施
(3)運営管理のBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)
今回の診療報酬改定では、訪問看護ステーションの業務効率化の項目が多く含まれます。
そのため、運営管理におけるBPRを実施し、運営プロセスを効率化し、品質向上や関係者の満足度の向上を図るための取り組みが重要です。
2024年の訪問看護の診療報酬改定に伴う運営管理のBPRでは、以下のような取り組みが求められます。
1.訪問看護の業務プロセスの再設計
従来の訪問看護の業務プロセスを見直し、効率化やサービスの質の向上を図ります。
具体的には、訪問スケジュールの最適化、訪問時のデータ入力の効率化、報告書の作成プロセスの見直しなどがあります。
2.専門外業務の軽減
訪問看護の場合、事務処理や報告書作成など、看護師や医療スタッフの専門外の業務が存在します。
BPRでは、これらの専門外業務を軽減するための工夫をし、看護師や医療スタッフの負担を減らし、訪問看護の質を向上させます。
3.ニーズの高いサービス提供の強化
地域におけるニーズを的確に捉え、適したケアを提供する選択と集中が重要です。
運営管理のBPRでは、ニーズに基づいて、ステーション方針や方向性を策定できる流れを作ります。
4.ICT の有効活用
ICT(情報通信技術)の活用やモバイルアプリケーションの導入など、最新のテクノロジーを訪問看護に活用します。これにより、訪問看護の効率化や情報共有の促進が図られます。
5.組織文化の変革
訪問看護では、チームワークや医療連携が重要です。BPRでは、協力関係を強化し、新しい業務プロセスの導入に向けた組織文化の変革が図られます。
6.関係者の参加とコミュニケーション
BPRの過程では、看護師や医療スタッフ、管理者など、関係者全員とプロセスを共有し、意見やアイデアを積極的に取り入れます。これにより、訪問看護の業務プロセスの改善に向けた意識の共有や協力が促進されます。
まとめ
人口の高齢化に伴い、末期がん、神経難病、精神疾患、小児、医療ニーズの高い在宅療養者などの増加し、医療保険の訪問看護ニーズが増加しています。
実際に令和3年の介護保険利用が66万9千人、医療保険利用が38万人となり、平成13年から介護保険3.5倍、医療保険7.7倍と、医療保険利用者が高い伸び率となっています。
加えて、2024年の診療報酬の改定では、介護保険改定には含まれない賃金アップの加算が新設されるなど、医療保険の訪問看護の重要性が示されました。
今後のニーズの変化や医療保険の重要性の増加を考慮すると、これまでの体制や業務の進め方を根本的に改革するBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)を進めることも適切であると言えます。
本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。