訪問看護の特別管理加算とは: 基本知識と算定要件(介護・医療)

特別管理加算とは、医療的な管理を必要としている利用者であっても、住み慣れた自宅で生活できるように計画的な管理を行うために用いられる加算です。

訪問看護ステーションを運営する上でこの「特別管理加算」の算定要件や減算の内容を把握することは、非常に重要です。

今回は、訪問看護の特別管理加算をテーマに医療保険と介護保険での算定要件の違いや算定要件、対象者、算定する場合の注意点などについてお伝えします。

特別管理加算とは?

特別管理加算とは、留置カテーテルや点滴注射など医療依存度が高く、訪問看護師による特別な管理が必要な利用者に対して、月1回の訪問看護サービスに追加で算定できる加算です。

この加算を受けるには、厚生労働省が定める基準に合致し、特別管理加算の要件を満たす訪問看護ステーションが対象となります。

特別管理加算は、訪問看護において介護保険と医療保険の両方で適用されますが、それぞれの保険制度において、異なる加算の算定要件が存在します。

特別管理加算に必要な提出書類とは

特別管理加算を算定する際には、地方厚生(支)局に「緊急時訪問看護加算・特別管理体制・ターミナルケア体制に関わる届出書」などを提出する必要があります。

この届出には、24時間対応体制加算を算定できる体制を整備していることが要件として求められています。

(1) 24時間対応体制加算又は24時間連絡体制加算を算定できる体制を整備していること

(2) 当該加算に該当する重傷者に対応できる職員体制、勤務体制が確保されていること

(3) 特別管理加算を算定する訪問看護ステーションにあっては、医療器具等の管理、病状の変化に適切に対応できるように、医療機関等との密接な連携体制が確保されていること

特別管理加算の分類

特別管理加算は、対象となる利用者の処置の難易度に応じて「特別管理加算Ⅰ」と「特別管理加算Ⅱ」の2段階の評価に分類され、加算額も異なります。

介護保険の特別管理加算の種類および単位数

加算の種類 単位数
特別管理加算(Ⅰ) 500単位/月
特別管理加算(Ⅱ) 250単位/月

医療保険の特別管理加算の種類および単位数

加算の種類 単位数
特別管理加算(Ⅰ) 5,000円/月
特別管理加算(Ⅱ) 2,500円/月

介護保険での特別管理加算の対象者

特別管理加算(Ⅰ): 500単位/月

・在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている状態

・在宅気管切開患者指導管理を受けている状態

・気管カニューレを使用している状態

・留置カテーテルを使用している状態

特別管理加算(Ⅱ): 250単位/月

・在宅自己腹膜灌流指導管理

・在宅血液透析指導管理

・在宅酸素療法指導管理

・在宅中心静脈栄養法指導管理

・在宅成分栄養経管栄養法指導管理

・在宅自己導尿指導管理

・在宅持続陽圧呼吸療法指導管理

・在宅自己疼痛管理指導管理

・在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態

・人工肛門または人工膀胱を設置している状態

・真皮を越える褥瘡の状態

①NPUAP分類Ⅲ度またはⅣ度 ※1
②DESIGN ® 分類 D3, D4, D5 ※2

・点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態

介護保険での特別管理加算の注意点

(1)1ヵ所の訪問看護事業所しか加算を算定できない

1人の利用者に対して、加算は1ヵ所の訪問看護事業所にしか算定できません。2ヵ所以上の訪問看護事業所を利用している場合、加算の分配は事業所間で合議を行う必要があります。

(2)単に留置カテーテルが挿入されているだけでは算定できない

介護保険の特別管理加算は、膀胱留置カテーテル、腎ろう、膀胱ろうの留置カテーテル、胃ろう、経鼻経管栄養チューブ、腹膜透析のカテーテルなどに該当しますが、単に留置カテーテルが挿入されているだけでは算定できません。

排液の性状や量の観察、薬剤注入、水内分バランスの計測など計画的な管理が行われている場合にのみ算定できます。そのため、皮下埋め込み式ポートが挿入されていても、在宅において薬剤注入などが行われていない場合、計画的な管理が不十分であるため、特別管理加算は適用されません。

(3)点滴注射は週3回以上の実施で算定できる

特別管理加算(Ⅱ)の適用条件である「点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態」は、主治医から週3日以上の点滴注射が必要と認められた場合、かつ、訪問看護事業所の看護職員が実際に週3日以上点滴注射を実施している状態を指します。

したがって、週に3日以上点滴注射を実施しない場合、特別管理加算(Ⅱ)の対象にはなりません。

また主治医の指示は、「在宅患者訪問点滴注射指示書」である必要はありません。通常の訪問看護指示書でも構いませんが、点滴注射の指示については7日毎に更新する必要があります。

医療保険での特別管理加算の対象者

特別管理加算(Ⅰ)5,000円/月

・在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている状態にある者

・在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者

・気管カニューレを使用している状態にある者

・留置カテーテルを使用している状態にある

特別管理加算(Ⅱ)2,500円/月

・在宅自己腹膜灌流指導管理を受けている状態にある者

・在宅血液透析指導管理を受けている状態にある者

・在宅酸素療法指導管理を受けている状態にある者

・在宅中心静脈栄養法指導管理を受けている状態にある者

・在宅成分栄養経管栄養法指導管理を受けている状態にある者

・在宅自己導尿指導管理を受けている状態にある者

・在宅人工呼吸指導管理を受けている状態にある者

・在宅持続陽圧呼吸療法指導管理を受けている状態にある者

・在宅自己疼痛管理指導管理を受けている状態にある者

・在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態にある者

・人工肛門または人工膀胱を設置している状態にある者

・真皮を越える褥瘡の状態にある者

①NPUAP分類Ⅲ度またはⅣ度 ※1
②DESIGN ® 分類 D3, D4, D5 ※2

・在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者

医療保険での特別管理加算の注意点

(1)末期というだけでは「在宅悪性腫 指導管理」の算定対象にならない

単に末期というだけでは, 特別管理加算の算定対象である 「在宅悪性腫 指導管理」を受けている状態とはなりません。

この指導管理は、医療機関で在宅での鎮痛療法や悪性腫瘍の化学療法を受けている末期の患者に提供され、その治療に関する管理を行うものです。

具体的には、「在宅における鎮痛療法または悪性腫瘍の化学療法」を受けている患者を指します。厚生省の資料には、

「末期の悪性腫瘍または,筋萎縮性側索硬化症もしくは筋ジストロフィーの患者であって、 持続性の疼痛があり、鎮痛剤の経口投与では疼痛が改善しないため注射による鎮痛剤注入が必要なもの,または注射による抗悪性腫瘍剤の注入が必要なものが、在宅において自ら実施する鎮痛療法, または化学療法をいう」

と明記されています。そのため、この指導管理を受けている場合、月に5,000円の評価が適用されます。

(2)通院し透析を受けているケースは, 「在宅血液透析指導管理を受けしている状態」には該当しない

「在宅血液透析指導管理」は、診療報酬において「維持血液透析が必要で、かつ病状が安定している患者が在宅で行う血液透析療法」を指します。通院し透析を受けているケースは, 「在宅血液透析指導管理を受けしている状態」には該当しません。

(3)内服薬などで疼痛をコントロールしている場合は、「在宅自己疼痛管理指導管理」には該当しない

「在宅自己疼痛管理指導管理」は、植込型脳・脊髄電気刺激装置を用いて在宅で難治性慢性疼痛の管理を患者自身が行っている場合を指します。内服薬などで疼痛をコントロールしている場合は、「在宅自己疼痛管理指導管理を受けている状態」には含まれません。

また、吸引だけを行っている場合は、算定対象にはなりません。「気管カニューレを使用している状態」や「在宅気管切開患者指導管理を受けている状態」であれば、算定の対象となります。


※1 NPUAP分類とは

米国褥瘡諮問委員会(National Pressure Ulcer Advisory Panel:NPUAP)が提唱した褥瘡の深達度を表す分類です。

<創の深さによる分類>

ステージ Ⅰ : 消退しない発赤
ステージⅡI : 部分欠損
ステージIII: 全層皮膚欠損 (THT) BHUGOT
ステージⅣ : 全層組織欠損

出典元:Mindsガイドラインライブラリ(旧版)褥瘡予防・管理ガイドライン


※2 DESIGN ®とは

DESIGNは日本褥瘡学会学術教育委員会が開発した褥瘡状態判定スケールです。

D: Depth (深さ) E: Exudate (滲出液) S: Size (大きさ)I:
Inflammation/Infection (炎症 / 感染) G: Granulation (肉芽組織)N: Nerotic tissue (壊死組織) P:Pocket (ポケット)、軽度をアルファベットの小文字 (d.e.s.i.g.n), 重度を大文字 (D.E.S.I.G.N)で表記

D3: 皮下組織までの損傷
D4: 皮下組織を越える損傷
D5: 関節腔, 体腔に至る損傷

出典元:一般社団法人 日本褥瘡学会:褥瘡評価ツール DESIGN ®

まとめ

今回は、訪問看護の特別管理加算についてお伝えしました。

医療保険と介護保険における異なる算定要件、対象者、そして注意点を把握することは、訪問看護ステーションの運営において極めて重要です。

特別管理加算を適切に活用することで、利用者にとって住み慣れた自宅での生活が続けられるサポートを提供でき、看護サービスの質と価値を向上させる一助となります。