訪問美容看護で実現する肝斑の改善!3剤使用の最新治療「リバースピール」の効果とは

こんにちは、恵比寿こもれびクリニックの院長、西嶌暁生です。

中年以降の女性で「肝斑」で悩んでいる方は多く、実際にクリニックに来院する人もあとをたちません。しかしながら、この「肝斑」は治療に難渋することがしばしばあります。

というのも、「肝斑」の原因は多岐にわたる上に一般的なシミと区別がつきにくく、診断が難しい場合があるからです。さらに、非典型的なケースも存在し、対応が複雑になることがあります。

加えて、「肝斑」の明確な定義自体が医学的に確立されていないという現状も、治療を困難にしている要因です。

こうした背景の中で、注目されている新しい治療法が「リバースピール」です。

今回は、医療従事者の皆さまを対象に、この治療法について医学的な観点を含めて解説します。

目次

肝斑の病態は器質的?機能的?

皮膚のシミやくすみの治療では、対象となる疾患が「器質的」なものか「機能的」なものかを見極めることが非常に重要です。

例えば、ほくろ、血管腫、老人性色素斑は「器質的」な疾患に分類されます。これらは手術やレーザー治療によって短期間で再発なく改善できることが特徴です。

一方で、今回のテーマである「肝斑」は、メラノサイトがさまざまな刺激を受けて起こる色素沈着症であり、「機能的」な疾患に分類されます。

肝斑の原因にはいくつかの説がありますが、真皮線維芽細胞から放出されるサイトカインが関与していることがわかっています。また、肝斑のメラノサイトは表皮と真皮の両方から刺激を受けることが特徴です。

つまり、「肝斑」は多くの刺激が影響する「機能的」な疾患です。この病態を正しく理解することが、肝斑の治療計画を立てるうえで欠かせないのです。

肝斑の特徴とは

肝斑を医学的に説明すると、「後天性の色素沈着に分類される色素性疾患」です。特徴として、メラノサイトの増殖は見られませんが、表皮の下層でメラニンが増え、真皮の上層にも沈着していることが確認されます。

肝斑の症状の特徴

肝斑の症状の特徴・原因は、以下になります。

・後天性のメラニン増加症の中では最も一般的。


・眼瞼周囲を除く領域に、刷毛(ハケ)で塗ったような茶褐色の色調が現れる。


・通常、日光が当たる部位に両側対称に現れる。(例:頬、上唇、前額、顎など)


・冬は目立ちにくく、春から夏にかけて濃くなる。


・頻度は男性よりも女性の方が遥かに多い。


・30~40歳代の妊娠可能年齢の女性に多く、月経前に悪化する場合がある。


・ストレスにより症状が悪化する。


・高リスクのスキンタイプ(スキンタイプ IV 以上)では色調が濃くなる傾向がある。

肝斑の原因と考えられていること

1. 紫外線の影響

紫外線を浴びることで、複数の内分泌刺激が過剰になる。


2. 妊娠によるホルモン変化

妊娠時に起こる生理的な変化(妊娠黒皮症)。


3. ホルモン関連の要因

卵巣疾患やホルモン避妊薬(エストロゲン-プロゲステロン製剤)の使用。


4. 薬剤の影響

ヒダントイン系薬の投与や光感作性薬剤(抗生剤など)。


5. 不適切なスキンケア

肌に負担をかける誤ったスキンケア方法。

ただし、肝斑の原因については、まだ十分に解明されていない部分があります。

肝斑とエストロゲン

肝斑は男性に比べて女性に圧倒的に多く見られます。また、月経周期によって色の濃淡が変化することがあり、ホルモンの影響を受けているケースも少なくありません。

肝斑との関連頻度が高いもの

・妊娠(妊娠後期)

・卵巣/下垂体部腫瘍

・経口避妊薬の使用

・閉経後のホルモン補充療法

・ジエチルスチルベストロール療法、など

肝斑が顔面に生じる理由とは

それではなぜ、なぜ肝斑は顔にできやすいのでしょうか?

その理由の一つは、顔が体の中で最も紫外線を浴びやすい部分だからです。さらに、顔は体幹と比べてメラノサイトの数が多いことも関係しています。

メラノサイトの数の比較

露光部の顔面皮膚に存在するメラノサイトの数:2,000個/mm2


体幹皮膚におけるメラノサイトの平均数:1,000個/mm2


頬部のメラノサイト/ケラチノサイト比は1:4

肝斑の病理学的特性

表皮:角化以上および基底層のケラチノサイトの空砲化


真皮:広範囲に慢性的な光障害

肝斑におけるメラノサイトの特徴

・数はわずかに増加


・特異的な形態


・大型化


・樹状突起が高度に発達


・メラニン生合成に関与する遺伝子およびメラノサイトマーカー遺伝子(チロシナーゼ、TP-1、TP-2、MITFなど)の発現量が増加


・メラノソームの形成・輸送が増加

これらをまとめると、日光暴露と肝斑の関係は、下図のようになります。

肝斑の血管の特性

肝斑の発生や進行には、以下のような血管の特性が関与していると考えられます。

肝斑の血管の特性としては、以下のような可能性が挙げられます。

真皮環境の影響

線維芽細胞など、真皮の環境が肝斑の発生に重要な役割を果たしている可能性があります。

微小循環と色素沈着の関係

皮膚の微小循環とメラノサイトの相互作用が、色素沈着の発生に影響している可能性があります。

血管新生の亢進

血管新生の活性化は、肝斑における主要な特徴の一つとされています。

血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の関与

血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor: VEGF)は、肝斑における真皮の異常な血管新生を引き起こす重要な因子である可能性があります。

肝斑のMASIスコア

肝斑の重症度を正確に分類し、適切な治療法を選び、さらに治療効果を正確に評価するために、「MASIスコア」が開発されました。

・病変面積 MA=肝斑面積


・重症度 SI=重症度指数

これらの2つの要素が考慮され、2016年には改良版(mMASI)が作成されました。

さて、ここまで粘り強く読んでお読みいただき、ありがとうございます。これで、肝斑の病態について、かなり詳しい医師レベルの知識を学んでいただいたことになります。

次からは、いよいよ肝斑の治療に関してお伝えしていきます。

肝斑治療の心構え

最初にお伝えするのは、少し残念なお知らせです。

「肝斑は完全に治すことはできませんが、コントロールすることは可能です。」

そのため、肝斑は治療しても完治せず、再発することがあるため、継続的な治療が必要です。

現在、クリニックで行っている肝斑の治療は、主に次の4つです。

①美白剤の外用
②レーザー治療
③ピーリング治療
④内服治療

本稿では、肝斑治療における最新のピーリング方法「リバースピール」について説明します。

肝斑に新しいピーリング方法「リバースピール」

これまでも肝斑にはピーリング治療が行われてきましたが、いくつかの課題がありました。

例えば、真皮まで届くピーリングでは治療後に肝斑が再発することがあり、中間層のピーリングでは炎症後の色素沈着リスクが高まります。そのため、従来のピーリング治療では浅い層のみを対象にしていました。

これらの課題を解決し、より効果的な治療を可能にしたのが新しいピーリング方法「リバースピール」です。(REVERSE PEELと表記することもあります。)

この治療は、名前の通り、皮膚の深層から表層へと逆方向にアプローチします。まず真皮の色素沈着を段階的に軽減し、その後表皮の色素沈着を取り除く方法です。治療は3つのステップで構成されています。

リバースピール(REVERSE PEEL)の3ステップ

第一段階:TCA/H2O2とコウジ酸を配合

・過酸化水素によりメラニンを酸化させた後、コウジ酸により美肌作用が続きます。


・トリクロロ酢酸(TCA)が浸透性を高めて、両成分とも真皮深層まで浸透します。


・低濃度H2O2が真皮の炎症を調節します。

実は、これは、以前の記事で紹介した「マッサージピール」と全く同じ製剤を使用しています。ただし、今回の「リバースピール」は皮膚に塗布する時間が短いため、「マッサージピール」とは少し異なる効果が得られます。

第二段階:高濃度乳酸によるピーリング

・乳酸78%、フィチン酸3%を配合した、pH0.5の製剤を利用して、皮膚の中間層に働きかけます。


・蓄積された古い角質を除去し、くすみ、美白に効果が期待できます。


・乳酸78%は皮膚に安全に塗布できる最大濃度です。


・フィチン酸は金属イオンのキレート剤として添加しています。

第三段階:種々のヒドロキシ酸を配合した製剤でピーリング

・ヒドロキシ酸(グリコール酸 20%、マンデル酸 20%、サリチル酸 10%)とコウジ酸2%、フィチン酸0.1%を配合しています。


・別名「フルーツ酸」とも呼ばれていて、古い角質を除去し肌を滑らかに整える作用があります。


・皮膚の浅層をターゲットにしています。

この3つのステップを通じて、第1〜3薬剤を使用し、真皮層から表皮の浅い層に向けて作用します。

これにより、皮膚の内側から整え、肝斑や慢性的な色素沈着を改善できます。

また、STEP1ではトリクロロ酢酸と過酸化水素を併用することで、皮膚剥離のリスクを抑え、ダウンタイムを短縮し、安全に施術を受けることができます。

リバースピールの症例

リバースピールと訪問美容看護の相性はバッチリ!

治療を訪問看護で提供する立場から見た場合のポイントは、下記の6つです。

①エビデンスがあり、効果が期待できる治療

②トラブルが少なく、安全な治療

③1回あたりの治療単価が高い

④1〜2ヶ月に1回程度、継続して行える治療

⑤施術時間が長すぎない

⑥他の治療との併用が可能

そして、リバースピールはこれらの条件をほぼ満たしている治療になります。

多くの女性が「肝斑」に悩んでいます。もちろん、リバースピールだけでなく、内服治療やスキンケアの見直しといった他の方法とも併用していきます。

しかし、これまで解決が難しかった「肝斑」を、大きなレーザー機器を使わず、在宅で医療レベルの治療が提供できる点は大きな魅力です!

リバースピールを訪問美容看護で行うためには、実際にマッサージピールを患者さんに提供するためにいくつかのステップが必要です。

STEP1 リバースピールの知識を習得する。

STEP2 リバースピールを行う技術を習得する。

STEP3 医師やクリニックと連携する。

STEP4 集患する。

まずは、STEP1を通して、将来的に本気で訪問看護として提供していきたいなら、STEP2~4をサポートする体制も準備しております。

おわりに

多くの女性が悩んでいる「肝斑」。訪問美容看護を通じて、リバースピールや内服、生活習慣の見直しを提供することで、大きな機器を使わずに改善できます。この方法は訪問美容看護にぴったりの治療法です。

また、独立して頑張っている看護師さんをサポートするメニューの一つとして役立つと思います!

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