【令和4年度新設】訪問看護の専門管理加算とは?

令和4年度の改定により、専門性の高い看護師が行う訪問看護における専門的な管理として「専門管理加算」が新設されました。

本コラムでは、「専門管理加算」についてその概要、算定要件、算定対象、加算の対象となる看護師などについてお伝えします。

専門管理加算とは?

専門管理加算とは、質の高い訪問看護の更なる充実を図る観点から、「専門性の高い看護師」が利用者の病態に応じた高度なケア及び管理の実施などの算定要件を満たした際に算定される加算です。

訪問看護ステーションで緩和ケア、褥瘡ケア、または人工肛門ケアと人工膀胱ケアに特化した専門の研修を受けた看護師、または特定行為研修を修了した看護師が、利用者に対して訪問看護を定期的に(1月に1回以上)提供し、かつ訪問看護の計画的な管理を行った場合、月に1回限り、以下の区分に従って訪問看護管理療養費に加算されます。

区分(1)専門管理加算(イ)

専門管理加算(イ) 2,500円/月(新設)

算定要件

緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門ケア、および人工膀胱ケアに専門的な研修を受けた看護師が計画的な管理を行った場合

算定対象者

悪性腫瘍の鎮痛療法または化学療法を受けている利用者、真皮を越える褥瘡の状態にある利用者(在宅患者訪問褥瘡管理指導料を算定する場合、真皮までの状態の利用者)、または人工肛門または人工膀胱周囲の皮膚にびらんなどの皮膚障害が持続的または反復して発生している利用者、または人工肛門または人工膀胱の他の合併症を有する利用者。

区分(2)専門管理加算(口)

専門管理加算(口) 2,500円/月(新設)

算定要件

特定行為研修を修了した看護師が計画的な管理を行った場合

算定対象者

特定行為に係る手順書※の交付対象となった利用者を算定する利用者に限る

※手順書とは?

手順書は、医師または歯科医師が看護師に診療の補助を行わせるために指示する文書で、患者の病状の範囲や診療の補助内容などが明確に規定されています。

具体的に、手順書に含まれる記載事項は以下の通りです。


1.看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲

2.診療の補助の内容

3.当該手順書に係る特定行為の対象となる患者

4.特定行為を行うときに確認すべき事項

5.医療の安全を確保するために医師または歯科医師との連絡が必要となった場合の連絡体制

6.特定行為を行った後の医師または歯科医師に対する報告の方法


なお、「3. 当該手順書に係る特定行為の対象となる患者」とは、その手順書を適用する患者の状態を指し、患者は、医師または歯科医師が手順書により指示を行う時点において特定されている必要があります。

手順書の具体的な内容については、1~6の手順書の記載事項に従い、各医療現場において、必要に応じて看護師等と連携し、医師または歯科医師があらかじめ作成することになっています。また、各医療現場の判断で、記載事項以外の事項やその具体的内容を追加することもできます。

参考文献:厚生労働省ホームページ 「特定行為に係る看護師の研修制度 手順書とは

<手順書が交付される特定行為>

①気管カニューレの交換

② 胃ろうカテーテルもしくは腸ろうカテーテルまたは胃ろうボタンの交換

③ 膀胱ろうカテーテルの交換

④ 褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去

⑤ 創傷に対する陰圧閉鎖療法

⑥ 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整

⑦ 脱水症状に対する輸液による補正

専門管理加算を算定できる看護師とは?

訪問看護ステーションが専門管理加算を算定するためには、以下のいずれかの研修を受けた看護師の配置が必要です。

(1)緩和ケア, 褥瘡ケアまたは人工肛門ケアおよび人工膀胱ケアに係る専門の研修

・緩和ケアに係る専門の研修
(1)緩和ケアに係る専門の研修
(ア)国または医療関係団体等が主催する研修であること (600時間以上の研修期間で, 修了証が交付されるもの)

(イ)緩和ケアのための専門的な知識・技術を有する看護師の養成を目的とした研修であること

(ウ)講義および演習により、次の内容を含むものであること

イ:ホスピスケア 疼痛緩和ケア総論および制度等の概要
ロ:悪性腫瘍または後天性免疫不全症候群のプロセスとその治療
ハ:悪性腫瘍または後天性免疫不全症候群患者の心理過程
ニ:緩和ケアのためのアセスメント並びに症状緩和のための支援方法
ホ:セルフケアへの支援および家族支援の方法
へ:ホスピスおよび疼痛緩和のための組織的取組とチームアプローチ
ト:ホスピスケア 緩和ケアにおけるリーダーシップとストレスマネジメント
チ:コンサルテーション方法
リ:ケアの質を保つためのデータ収集・分析等について
ヌ:実習により、事例に基づくアセスメントとホスピスケア 緩和ケアの実践

要件を満たす看護師
緩和ケア (がん性疼痛看護), 乳がん看護 がん放射線療法看護 がん薬物療法看護 がん化学療法看護) の認定看護師またはがん看護の専門看護師
・褥瘡ケアに係る専門の研修
(2)褥瘡ケアに係る専門の研修
(ア)または (イ)

(ア) 国または医療関係団体等が主催する研修であって、必要な褥瘡等の創傷ケア知識・技術が習得できる600時間以上の研修期間で、修了証が交付されるもの

(イ)保健師助産師看護師法第37条の2第2項第5号に規定する指定研修機関において行われる褥瘡等の創傷ケアに係る研修

(ウ) 講義および演習等により、褥瘡予防管理のためのリスクマネジメント並びにケアに関する知識・技術の習得、コンサルテーション方法、質保証の方法等を具体例に基づいて実施する研修

要件を満たす看護師
皮膚・排泄ケア認定看護師特定行為研修修了者 (創傷管理関連)
・人工肛門ケアおよび人工膀胱ケアに係る専門の研修
(3)人工肛門ケアおよび人工膀胱ケアに係る専門の研修
(ア)または (イ)

(ア)国または医療関係団体等が主催する研修であって、必要な人工肛門および人工膀胱のケアに関する知識・技術が習得できる600時間以上の研修期間で修了証が交付されるもの

(イ)講義および演習等により, 人工肛門および人工膀胱管理のための皮膚障害に関するアセスメント並びにケアに関する知識・技術の習得 コンサルテーション方法,質保証の方法等を具体例に基づいて実施する研修

要件を満たす看護師
皮膚・排泄ケアの認定看護師

(2)指定研修機関における特定行為のうち訪問看護において専門の管理を必要とするものに係る研修

訪問看護において専門の管理を必要とするものは、下記の(ア)から(キ)になります。

(ア)気管カニューレの交換

(イ)胃ろうカテーテルもしくは腸ろうカテーテルまたは胃ろうボタンの交換

(ウ)膀胱ろうカテーテルの交換

(エ)褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去

(オ) 創傷に対する陰圧閉鎖療法

(カ)持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整

(キ)脱水症状に対する輸液による補正

該当する特定行為研修

① 以下のいずれかの区分の研修

・呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連
・ろう孔管理関連
・創傷管理関連
・栄養および水分管理に係る薬剤投与関連

② 在宅 慢性期領域パッケージ研修

まとめ

令和4年度の改定により、訪問看護の専門管理加算が導入され、専門的な看護師の役割が強調されました。

国は、専門性の高い看護師の評価を充実し、訪問看護の「さらなる質向上」を目指していることからこれからもその傾向は続くものと予想されます。

今後、専門管理加算を算定するために必要な専門性の高い看護師を配置しているステーションが大きなアドバンテージを持つことなります。