【令和4度改定対応】訪問看護の退院時共同指導加算、退院支援指導加算(介護保険・医療保険)

病院または施設から退院(退所)する際、自宅での継続的な医療処置・管理が必要な場合には、スムーズに在宅療養に移行できるための支援・指導が必要となります。

訪問看護ステーション等の看護師等が医療機関と共同して、利用者・家族に対し在宅での療養上必要な支援・指導を行うことで、医療機関等からの退院後に、円滑に訪問看護を提供することが可能となります。

本日は、訪問看護の退院時の指導・支援に算定できる加算である、退院時共同指導加算(介護保険・医療保険)と退院支援指導加算(医療保険)について解説していきます。

退院時共同指導加算(介護保険)とは

介護保険における退院時共同指導加算とは、病院、診療所、介護老人保健施設、または介護医療院に入院(入所)中の利用者やその家族に対して、退院(退所)時に、入院(入所)施設の主治医やその他の職員と協力して、在宅生活における療養に必要な指導を行い、その内容を文書で提供した場合に適用される加算です。

退院時共同指導加算(介護保険)の算定要件

退院時共同指導加算(介護保険)の算定要件は、以下のとおりです。

・主治医の所属する保険医療機関に入院中または介護老人保健施設、介護医療院に入所中であること


・退院(退所)後の在宅療養に関して、訪問看護ステーションの看護師など(准看護師を除く)と退院(退所)施設の職員(医師やその他の従業者)が共同で指導すること


・指導内容を文書で利用者または家族などに提供すること


・退院または退所後に訪問看護を実施すること。

退院時共同指導加算の単位数

退院時共同指導加算の単位数は、以下のようになっています。

加算の種類 単位数
退院時共同指導加算 600単位

退院・退所につき1回 (特別管理加算の算定対象者については2
回)に限り算定。

退院時共同指導加算の文書の様式について

特に様式の決まりはありません(医療保険も同様です)。

実施日、共同指導実施者、退院後の療養生活に関する指導、および診療の継続に関する指導、初回訪問の予定などを含めると良いでしょう。

退院時共同指導加算の留意点

介護保険の退院時共同指導加算の留意点は、以下のとおりです。

・一人の利用者に対して月1回のみ算定可能です。


・退院(退所)後に初回の訪問看護を実施した日に算定します。初回の訪問看護が指導実施月の翌月の場合は、翌月に算定します。


・別管理加算の対象者に対して共同指導を複数日に実施した場合、2回分を初回の訪問看護に対して算定可能です。


・退院時共同指導は, 准看護師は担当できません。


・医療保険で退院時共同指導加算を算定する場合や介護保険の初回加算を算定する場合は、算定できません。


・複数の訪問看護ステーション等で退院時共同指導加算を行った場合、1カ所のみ算定可能です。ただし、2回算定可能な利用者である場合は、1回ずつ算定できます。


・退退院時共同指導加算と初回加算を同時に算定することはできません。

令和3年の改定によりテレビ電話装置等の活用が可能に

令和3年度介護報酬改定において、退院時共同指導加算の算定要件が新型コロナウイルス感染症対策やICT活用の観点から見直され、テレビ電話などの活用が認められるようになりました。

ただし、テレビ電話装置などの活用については、利用者またはその看護に携わる者からの同意が必要となります。

また、テレビ電話装置の活用に際しては、個人情報保護委員会や厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」などを遵守する必要があります。

退院時共同指導加算(医療保険)とは

退院時共同指導加算(医療保険)は、在宅での療養生活へ円滑に移行するための支援を評価する加算です。

退院時共同指導加算(医療保険)の算定要件

退院時共同指導加算(医療保険)の算定要件は、以下のとおりです。

・主治医の所属する保険医療機関に入院中または、介護老人保健施設、介護医療院に入所中であること。


・退院(退所)後に指定訪問看護を受けようとする利用者またはその家族に対して指導を行うこと。


・退院(退所)後の在宅療養について、訪問看護ステーションの看護師など(准看護師を除く)と退院(退所)施設の職員(医師、看護師、医師または看護師の指示を受けた准看護師)が共同で指導すること。


・指導内容を文書で利用者または家族などに提供すること。

退院時共同指導加算(医療保険)の算定額

加算の種類 算定料
退院時共同指導加算 8,000円

退院時共同指導加算の文書の様式について

特に様式の決まりはありません(介護保険も同様です)。

実施日、共同指導実施者、退院後の療養生活に関する指導、および診療の継続に関する指導、初回訪問の予定などを含めると良いでしょう。

退院時共同指導加算(医療保険)の留意点

退院時共同指導加算(医療保険)の留意点は、以下のとおりです。

・退院・退所後の1回目の訪問看護に対して、訪問看護管理療養費に加算されます。


・退院・退所について、1回に限り算定されます。ただし、厚生労働大臣が定める特定の疾病等の者※1と特別管理加算の対象者※2は、1回の退院時に2回まで算定可能です(別々の日に指導した場合に限る)。


・2回算定できる利用者に対して、複数の訪問看護ステーション等が退院時共同指導を行う場合、それぞれの訪問看護ステーション等において、1回ずつの算定も可能です。


・月末に指導が行われた場合や、指導を行った月が訪問看護を開始する前月であっても算定は可能です。


・入院(入所)先の施設と訪問看護ステーションが特別な関係にある場合でも算定が可能です。

退院支援指導加算(医療保険)とは

退院支援指導加算(医療保険)とは、退院日に在宅において療養上必要な指導を行った場合の評価です。

退院当日には訪問看護療養費は発生しないため、退院日の翌日以降に初回の訪問看護が実施された場合に、訪問看護管理療養費に加算されます。

退院支援指導加算の算定対象者

令和4年度の改定により、長時間の訪問を要する者に対して、1回の退院支援指導の時間が90分を超えた場合の評価が新設されました。

退院支援指導加算の算定対象者は、以下のとおりです。

(1)算定対象者

① 厚生労働大臣が定める疾病等の者※1
② 特別管理加算の対象者※2
③ 退院日の訪問看護が必要であると認められた者


(2)長時間の訪問を要する者(長時間訪問看護加算の対象者)

① 15歳未満の超重症児または準超重症児共
② 特別管理加算の対象者※2
③ (精神科) 特別訪問看護指示書に係る訪問看護を受けている者

退院支援指導加算の算定金額

加算の種類 算定料
退院支援指導加算 6,000円
長時間の訪問を要する者に対して1回の時間が90分を超えた場合 (新設) 8,400円

退院支援指導加算の留意点

退院支援指導加算の留意点は、以下の通りです。

・訪問看護ステーションと特別の関係にある医療機関からの退院の場合も算定可能です。


・准看護師は担当できません。


・原則、1人の利用者に対して1つの訪問看護ステーションのみが算定可能です。


・初日の訪問看護が指導実施月の翌月に行われた場合、翌月に算定します。


・退院時には訪問看護指示書の交付が必要です。主治医が退院後に指示書を交付した場合でも、退院支援指導を行う前に指示書が交付されていれば問題ありません。


・利用者が退院日の翌日以降、初日の指定訪問看護実施前に死亡または再入院した場合、その日にこの加算のみを単独で算定できます。訪問看護療養費は請求できません。


・月末に退院し、退院支援指導を行い、初回の訪問看護が翌月の場合も算定できます。


※1 厚生労働大臣が定める疾病等の者

特掲診療料の施設基準等別表第7に掲げる疾病等の者

・末期の悪性腫瘍
・多発性硬化症
・重症筋無力症
・スモン
・筋萎縮性側索硬化症,脊髄
・小脳変性症
・ハンチントン病
・進行性筋ジストロフィー症
・パーキンソン病関連疾患 (進行性核上性麻痺, 大脳皮質基底核変性症, パーキンソン病 (ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって生活機能障害度がII度またはⅢ度のものに限る。))
・多系統萎縮症(線条体黒質変性症, オリーブ橋小脳萎縮症, シャイ・ドレーガー症候群)
・プリオン病,
・亜急性硬化性全脳炎
・ライソゾーム病
・副腎白質ジストロフィー
・脊髄性筋萎縮症
・球脊髄性筋萎縮症,
・慢性炎症性脱髄性多発神経炎,
・後天性免疫不全症候群
・頸髄損傷または人工呼吸器を使用している状態の者

※2 特別管理加算の対象者

■特掲診療料の施設基準等別表第8に掲げる者

(1)在宅悪性腫瘍等患者指導管理もしくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者または気管カニューレもしくは留置カテーテルを使用している状態にある者

(2)在宅自己腹膜灌流指導管理, 在宅血液透析指導管理, 在宅酸素療法指導管理,在宅中心静脈栄養法指導管理, 在宅成分栄養経管栄養法指導管理, 在宅自己導尿指導管理, 在宅人工呼吸指導管理, 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理, 在宅自己疼痛管理
指導管理または在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態にある者

(3)人工肛門または人工膀胱を設置している状態にある者

(4)真皮を越える褥瘡の状態にある者

(5)在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者

まとめ

※本記事は、作成時の最新の資料や情報をもとに作成されています。詳細な解釈や申請については、必要に応じて最新情報を確認し、自治体等にお問い合わせください。