訪問看護師に必要な能力の一つに利用者、家族との「コミュニケーションスキル」があります。
訪問看護師の存在は、退院後の利用者や家族にとって不安を和らげ、頼れる支えになります。
限られた訪問時間の中で、利用者と家族の感情や思いを理解し、継続的なサポートを提供するために、コミュニケーションスキルの向上が不可欠です。
本コラムでは、訪問看護において必要なコミュニケーションスキル向上のためのポイントや実践策を紹介します。
良好なコミュニケーションをとるために留意すること
訪問看護において在宅で療養をおこなっている利用者・家族と良好なコミュニケーションをとるためには、以下のポイントを押さえる必要があります。
(1)利用者の状況・状態の考慮
利用者の状況・状態の考慮: 利用者の年齢、認知能力、知的・身体的状態、社会的経験を理解し、コミュニケーションを調整します。
(2)非言語的コミュニケーションへの配慮
利用者の表情、しぐさ、態度、言葉のニュアンスを敏感に捉え、情報を読み取ります。
(3)利用者・家族への敬意
利用者・家族への敬意: 敬意をもって接し、タメ口やパターナリズム(本人の意志に反して行動に介入・干渉すること)を避けます。
(4)利用者の立場に立ってケアを提供する
利用者・家族と同じ空間に身を置き、安心感を持つようにします。共感し、利用者の立場に立ってケアを提供することが大切です。
訪問看護師に求められる基本的なコミュニケーションスキル
訪問看護師が利用者・家族と信頼関係を築き、適切なケアを提供するためは、以下のようなコミュニケーションスキルが求められます。
(1)聴くための準備
聴くことはコミュニケーションの基本ですが、良い聴き手になるためには準備が必要です。
聴取する場所や環境をプライバシーを尊重するものに整えます。療養者や家族が話す際に安心感を持つためには、他者の視線や耳からの干渉を最小限に抑えることが大切です。
また聴くための環境を整え、騒音や他の外部要因が気を散らさないようにします。静かな場所で会話をすることが、情報の受け取りを助けます。
(2)現状の理解と問題の明確化
問題を理解し、利用者者が自分の状況をより明確に説明できるようにサポートします。
適切な問いかけを選び、オープンな質問を使って療養者に話すきっかけを提供します。これにより、療養者が自分の気持ちや状況を自由に表現しやすくなります。
積極的で理解的な態度を示し、療養者が話すのをためらわないような雰囲気を作り出します。療養者が自分の課題や悩みを共有しやすくなります。
(3)傾聴する
傾聴は簡単なことのように思えますが、非常に重要なスキルです。
利用者者に全ての注意を向け、言葉だけでなく感情やニュアンスをキャッチします。療養者が重要な情報や感情を共有しやすくなります。
療養者の話に対して共感的な態度を示し、理解を示します。感情や経験に共感することで、療養者は話すことで支えられていると感じます。
(4)応答する
適切な応答は、療養者が理解されていると感じるのに役立ちます。首を縦に振ったり、うなずいたり、相槌を打つなどの肯定的なサインを提供します。これにより、療養者は自分の言葉が受け入れられていると感じ、安心します。
(5)共感する
共感は療養者との信頼関係を築くのに重要です。
療養者の感情を正確に理解し、それを適切に伝えます。共感は、療養者の感情やストレスに対して受け止め、支える役割を果たします。
これらのコミュニケーションスキルを駆使することで、訪問看護師は療養者との信頼関係を築き、適切なケアプランを立てるのに役立ちます。療養者や家族は、自分の声が届くことを感じ、共感と理解を受けることで安心し、治療やセルフケアに協力しやすくなります。
訪問看護師が注意すべき不適切なコミュニケーションとは
訪問看護師が注意すべき、不適切なコミュニケーションについて以下の文章を踏まえて項目ごとに解説してください。
(1)専門家の視点だけの説明
看護師は専門家としての立場から、「ここで看護のケアや技術を最優先すべきだ」と考えていても、療養者の意向を無視して看護が主導的になってはいけません。むしろ、療養者やその家族との信頼関係を築き、彼らが納得し、喜んで協力してくれるまで待つことが大切です。
(2)早い段階でのアドバイスや説明
療養者が苦しんでいる段階で早めにアドバイスや説明をすることは、利用者が自分の苦しみを理解してほしいと願っている思いを抑え込んでしまう可能性があります。状況がよくわからないままになるだけでなく、感情体験の共有を妨げてしまうことになってしまいます。
(3)決めつけるような表現
物事には単純に「良い」または「悪い」という評価だけで片付けられないことが多くあります。利用者や家族が自分の対処方法や思いを話した際に、看護師などが「それはダメですね」「そういうことは避けるべきですね」といった判断を早めに下してしまうと、自分たちの感情や考えが無視されたと感じることがあります。
(4)質問の連続
訪問看護師は、利用者の問題を明確に理解したいという思いから、質問を連発してしまうことがあります。しかし、これによって療養者が自分のペースで話すことができなくなり、何を答えるべきか戸惑いや尋問されているような気分になることがあります。
また、時には行動や選択には特別な理由がないこともあります。看護師が利用者を深く理解しようとする気持ちが強すぎて、「それはなぜですか?」と質問を繰り返すことで、利用者に苦痛を与えることがあるかもしれません。
(5)オウム返しが中心の応答
オウム返しは、相手の言葉を繰り返すテクニックで、相手が理解されている感じや次の話題への移行を促すのに役立ちます。
しかし、これを頻繁に使いすぎると、人工的で機械的な印象を与え、療養者にイライラさせることがあります。また、相手が本当に理解しているのか疑念を抱かせることもあります。
(6)遮断
利用者が心配や困っていることを話す際、時には深刻な話題になることがあります。訪問看護師が対応できないと感じる場合、その話題を避けるために、すぐに返答したり、利用者の意図に合わない質問をしたりすることがあります。これにより、利用者の話が中断されてしまうことがあります。
どうしてもお互いの相性が合わないと感じる場合の対応
一方で、いくらコミュニケーション心を配っても、会話が続かず、話の流れも悪い、自分に対してなんとなくよそよそしさを感じる、そんな利用者と巡り合うこともあります。
訪問時の自分の態度や言葉遣いを振り返ったりしても状況が変わらず、しだいに訪問自体が負担に感じてしまうこともあります。
苦しくなってしまっては、よいケアを提供できなくなってしまいます。そのようなときは、担当を変えることや、同僚や上司に相談することも検討してみましょう。
利用者も看護師も人間ですから、特別な理由がなくてもどうしてもお互いの相性が合わないのは仕方がないことです。それを受け入れることも重要です。
まとめ
訪問看護師にとって、利用者や家族との信頼関係を築くことは大切な使命です。コミュニケーションスキルの向上は、その使命を果たすための重要な要素です。
なにより利用者の状況や感情を尊重し、共感し、信頼を築く努力は、訪問看護の質を向上させ、利用者や家族の生活を支える一助となります。
今回ご紹介したコミュニケーションに関する情報が訪問看護師の参考になれば幸いです。
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