HIV感染症/AIDSは、かつて治療方法が確立していなかった時代においては、死を意味するものと考えられていましたが、HIV治療の進歩により、長期的な生存が可能となりました。
現在多くのHIV感染者は、外来通院しながら、抗HIV薬を内服することでウイルスを制御し、社会的な活動を続けています。
しかし、未だにHIV感染症の医療知識や技術が不足していたり、エイズに対する差別や偏見があるため、感染者や患者が十分な在宅医療や介護を受けられない状況も存在します。
また、近年では、感染者の高齢化や長期的な合併症の増加により、在宅での訪問看護や介護が必要な人々が増加しています。
今回は、HIV感染症/AIDSをテーマにその概要から在宅療養における特徴、訪問看護に求められる役割と知っておきたいポイント 等についてお伝えします。
HIV感染症/AIDSとは
HIV感染症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)がCD4陽性リンパ球に感染し、これを破壊することで免疫力が低下する病態です。
この免疫機能の低下が進行すると、AIDS(後天性免疫不全症候群)の特徴である日和見感染症やHIV関連の腫瘍が発症し、臨床的にAIDSと診断されます。
HIV 感染症の経過 (病期)
(1)感染初期(急性期)
HIV感染後の初期段階では、ウイルスが急速に増殖します。患者はしばしば発熱、倦怠感、筋肉痛、リンパ節の腫れ、発疹など、インフルエンザに似た症状を経験します。しかし、これらの症状は数週間で自然に消えてしまいます。
(2)無症候期
急性症状が消失した後も、HIVウイルスは増殖を続けます。しかし、宿主の免疫応答により、しばしば症状のないバランスの取れた状態が長期間続きます。この期間でも、HIVは非常に速い速度で増殖し続けており、CD4陽性リンパ球は次々と感染していきます。平均的には、CD4陽性リンパ球はHIVに感染してから約2.2日で死滅します。
(3)AIDS発症期
ウイルスの増殖と宿主の免疫応答による平衡が崩れ、血中のウイルス量(HIV RNA量)が増加し、CD4陽性リンパ球数が減少し始めると、感染者はAIDSを発症します。
HIV感染者の主体は20~40歳代にありますが、10歳代や60~80歳代の感染者も増加しており、感染は拡大の傾向にあります。
また、抗HIV薬治療の成功により、生存期間が延びる一方で、AIDS発症者の一部は脳や中枢神経系に後遺症を残すことがあります。
HIVの感染経路
HIVの主な感染経路は、①性行為による感染、②血液を介しての感染、③母子感染の3つです。
①性行為による感染
HIVは、性行為において精液や膣分泌液中に含まれる場合、感染の可能性があります。
②血液を介しての感染
注射器や注射針の共有など、血液との接触を通じて感染することもあります。また血液が傷口や粘膜に大量に付着した場合、HIVの感染リスクが生じます。
③母子感染
HIV感染した母親から赤ちゃんへの感染、通称母子感染は、妊娠、出産、授乳の過程で起こり得ます。具体的には、HIVが胎盤を通じて胎児に感染する妊娠中の感染、出産時の母体と赤ちゃんの血液の接触、そして母乳を介しての感染が挙げられます。
HIV感染における心理的・社会的特徴
HIV感染における長期間にわたる療養生活では、自己の生活を再構築するために、疾患に対処し、日常生活でのセルフケア能力を高めることが必要です。
また、長期間の療養生活には、医療費などの経済的負担が生じる可能性があります。
HIV感染症に伴う様々な差別や偏見は未だに存在し、家族、配偶者、パートナー、親しい友人などに感染状況を伝えられず、孤立感が増すことや、感染状況を秘密にしていることによる精神的負担が生じることがあります。周囲の人々との関係を維持することが難しくなることもあります。
一方で、HIV感染状況を周囲の人々に伝える場合、受け取る側も衝撃を受けることがあり、感染者を支える周囲の人々も精神的、社会的な負担を感じることがあります。
HIV感染における社会的な問題
・偏見・差別
HIV感染者やエイズ患者は、時に社会的な偏見や差別に直面します。支援や理解を得ることが難しく、仕事や学校、家族などで困難に直面することがあります。
・プライバシーの問題
HIV感染者やエイズ患者は、自分の状態を隠すか開示するかのジレンマに直面します。特に、就学や就職などで自分の状態を開示することが必要になる場合、偏見や差別を恐れることがあります。
・病名開示に対する問題
HIV感染者やエイズ患者が自分の状態を開示することは、結婚や出産などの大きな決定に影響を与える可能性があります。パートナーや家族が病状を知った場合、不安や差別の懸念が生じることがあります。
HIV感染症の治療方法
HIVを体内から完全に撲滅する方法はまだありませんが、1997年以降、抗HIV薬の多剤併用療法が開発され、HIVの増殖を抑制し、感染症の進行を抑えることができるようになりました。
近年では、HIV感染症の治療法が更に進歩し、服薬や通院の頻度も減少しています。通常、服薬は1日に1~2回、通院は1~3か月に1回程度です。
HIV感染症を完治させることはできませんが、適切な治療を続けることで、長期的には普通の日常生活を送ることが可能です。
HIV感染症の治療の2つの目的
HIV感染症の治療には、以下の2つの目的があります。
1. HIV感染症の進行を遅らせる
HIV感染症の進行を遅らせるためには、抗HIV薬を使用します。これらの薬は体内でのHIVの増殖を抑制し、感染症の進行を抑える治療に役立ちます。
治療の方針に応じて、抗HIV薬は患者の症状に基づいて選択され、複数の異なる薬剤を組み合わせて処方されることがあります。
2. 日和見感染症の予防と治療
予防
免疫機能の低下により、日和見感染症が発症する可能性がある場合、予防薬を服用します。
治療
日和見感染症が発症した場合、適切な治療薬を服用します。病原体によって異なりますが、ほとんどの日和見感染症は治療によってほぼ完治させることが可能です。
HIV感染症における在宅療養支援とは
HIV感染症の予後が改善し、多くの患者が社会生活と治療を両立しながら生活しています。しかし、AIDSを発症し、日和見疾患が中枢神経に影響を及ぼす場合、治療によって症状が安定しても、認知機能や運動機能に後遺症が残ることがあります。
また、患者の加齢に伴い、HIV感染症以外の脳血管障害、虚血性心疾患、悪性腫瘍などの合併症の発症や経済・社会的問題も生じています。そのため、支援内容も多様化しています。
そのため訪問看護には、感染者が馴染みのある地域で自分らしく生活していけるように、必要時に医療機関や保健・福祉・地域などの多職種と連携し、患者の療養生活の基盤を支えていく役割が求められています。
HIV感染者および家族への援助における留意点
HIV感染者および家族への援助・支援をおこなうにあたり、HIV感染者の身体的, 心理・社会的特徴をふまえて以下の点に留意する必要があります。
(1)プライバシーを尊重した医療環境の提供
感染者や家族のプライバシーを守り、安心して医療を受けられる環境を提供することが大切です。個人情報の漏洩を防ぐ対策を取り、心理的な支えも提供します。
(2)セルフマネジメント能力の支援
感染者が自分の健康管理に参加できるよう、セルフマネジメント能力を身につける支援をします。医療や看護に関する知識を提供し、患者が治療計画に参加できるように支援します。
(3)情報提供と意思決定の促進
患者や家族に正確な情報を提供し、療養や治療の選択肢について意思決定を促します。患者の意思を尊重し、QOL(生活の質)を考慮した治療計画を立てるために、医療チームとの協力が重要です。
HIV感染者に求められる看護アセスメントとは
HIV感染症には、以下のような症状があります。
1.HIV感染後2~4週間の潜伏期間の後に起こる急性感染症
2.免疫力が低下したことで生じる日和見感染症
3.HIVそのものによる症状
4.抗HIV薬による副作用
5.治療開始後、免疫力が回復する過程で沈静化した日和見感染症を発症する免疫再構築症候群(immune reconstitution inflammatory syndrome: IRIS)
これらの身体症状が日常生活や精神的に影響を与えるため、総合的なアセスメントが重要です。
現在の臨床病期や免疫状態、治療内容や時期などを把握し、身体所見や将来の症状を予測しながら、その変化をしっかり観察することが重要です。
それでは、HIV感染者における訪問看護のアセスメント項目について(1)身体的側面、(2)日常生活の側面、(3)認知・心理的側面、(4)社会・経済的側面からみていきましょう。
(1)身体的側面
現在の免疫状態よび日和見感染症の徴候および抗HIV薬の副作用をアセスメントします。
病歴・検査データ
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
---|---|
血液系 | ・CD4 陽性リンパ球数、血中ウイルス量(HIV-RNA量)、 HIV薬剤耐性検査
・白血球数、赤血球数、ヘモグロビン値 血小板数、CPR, HBs抗原、HBs抗体、HCV抗体、RPR 法、梅毒トリポネーマ抗体 •β-Dグルカン、トキソプラズマ抗体、サイトメガロウイルス抗原抗体価、クリプトコッカス抗原抗体価 |
腎・泌尿器系 | ・尿検査 |
呼吸・循環器系 | ・胸部X線、心電図、胸部CT |
消化器系 | ・上部消化管内視鏡、下部消化管内視鏡、腹部CT
・便検査 (培養、原虫) |
脳神経系 | ・頭部CT、髄液検査、MRI、脳血流量測定 |
眼系 | ・視力、眼底检查 |
婦人科系 | ・子宮頸部細胞診 |
皮膚系 | ・皮膚粘膜生検 |
バイタルサイン | ・体温、脈拍、血圧、呼吸数、Spo2 |
身体所見 | ・身長および体重 (とくに体重減少の有無、BMI) |
兆候・症状
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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現在の免疫状態および日和見感染症 | ・日和見感染症を示唆する主な症状(発熱、頭痛、呼吸苦、皮疹、下痢、意識状態の変化、リンパ節腫脹) |
抗HIV薬の副作用 | ・薬剤により出現する副作用は異なるが、以下の検査データを確認する:肝機能、腎機能、TG、LDLコレステロール、血糖
・抗HIV薬開始後の免疫再構築症候群(IRIS)にも注意する |
(2)日常生活の側面
2次感染のための予防行動、長期療養生活に影響する要因、服薬行動に及ぼす要因等をアセスメントします。
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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環境 | ・住環境, ペットの有無, 屋外環境 |
食事 | ・食欲、食事摂取量、食事回数、飲酒、喫煙、嚥下時困難の有無 |
排泄 | ・排便回数、性状、出血の有無、下痢止めの使用有無 |
睡眠 | ・薬剤により出現する副作用は異なるが、以下の検査データを確認する:肝機能、腎機能、TG、LDLコレステロール、血糖
・抗HIV薬開始後の免疫再構築症候群(IRIS)にも注意する |
清潔 | ・日和見感染症を示唆する主な症状(発熱、頭痛、呼吸苦、皮疹、下痢、意識状態の変化、リンパ節腫脹) |
動作・活動 | ・ADL、どのような動作で低酸素血症が生じるか、性行動, コンドーム使用 |
趣味・余暇活動 | ・趣味、社会参加状況、他者との交流 |
セルフケア能力 | ・日常生活を調整しながら治療を継続する能力の有無・程度
・薬剤の副作用についての情報、自分の体への関心、心身の症状出現時の対応 |
(3)認知・心理的側面
疾患および治療が心理状態に及ぼす影響についてアセスメントします。
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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疾患や治療の理解および受け止め | ・疾患やHIVの感染経路、感染予防行動,他の性感染症等への理解度、受け止め方,健康認識、薬や服薬行動への認知
・性行動やセクシュアリティへの認知、価値観、セーファーセックスについての知識や行動など |
価値・信念 | ・何に価値を置き、何を大切にしているか
・信仰する宗教は何か |
対処方法 | ・これまで問題にどのように対処してきたか |
心理状態 | ・不安、動揺,否認など |
(4)社会・経済的側面
社会・経済的状態、通院などの療養生活に影響する要因についてアセスメントします。
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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役割 | ・職場での地位や役割、家庭内での役割 |
職業 | ・就業の有無、仕事内容や労働量, 職場内での地位や役割、通勤方法や時間、職場環境、人間関係など |
家族構成 | ・何人家族か、同居家族の有無 人数 |
家族の状態 | ・それまでの配偶者やパートナーとの関係性、問題解決のための互いの対処方法 |
キーパーソン | ・家族または周囲の人のなかでのキーパーソンは誰か |
感染告知の有無 | ・誰にHIV感染を伝えているか、伝えた人の反応や状況 (疾患の受け止めや協力体制の有無) |
経済状態 | ・医療保険の加入の有無と種類, 医療費の支払い能力 |
ソーシャルサポート | ・友人・知人・同僚・患者会などのサポートの有無、利用できる社会資源
・地域の医療福祉資源、 HIV ボランティアグループなどのサポートの有無 |
日常生活における教育的支援および援助
HIV感染症や治療に関する情報提供を行い、日常生活での注意点や2次感染予防に焦点を当て、セルフモニタリングやセルフマネジメントを患者や家族に教育的支援・援助する必要があります。
セルフモニタリングでは、HIV感染症において重要な検査データであるCD4陽性リンパ球数と血中ウイルス量(HIV RNA量)が重要です。定期的に医師の診察を受けるために外来通院し、無症候期においても自覚症状がないために血液検査を行い、免疫状態を把握し、日和見感染症の徴候を早期に発見することが重要です。
陽性リンパ球数と日和見感染症
出典元:国立感染症研究所ホームページ「AIDS(後天性免疫不全症候群)とは」
CD4陽性リンパ球数が減少し、免疫能が低下すると、日和見感染症や日和見腫の発症リスクが高まります。ただし、その数値が低くなったからと言って、必ずしもその病気を発症するとは限りません。
また、日和見感染症との関連で、眼科の検診や女性の場合は子宮頸がん検診も重要です。これらの検査を定期的に受けることが大切です。
さらに、療養の長期化や高齢化に伴って、合併症や併存疾患への対策が必要です。主な合併症には、脂質代謝異常、心血管疾患、慢性腎臓病、肝疾患、骨関連疾患、HIV関連神経認知障害、非AIDS関連悪性腫瘍などがあります。これらの合併症や併存疾患の早期発見を支援するために、職場での定期健診や地域での健診を行っていくことが重要です。
HIV感染症における服薬支援
HIVの内服治療では、薬剤の血中濃度を一定に保つために、決められた時間に100%に近い確実な内服を続ける必要があります。これによって薬剤耐性の発生を防ぐことが求められます。
抗HIV薬の血中濃度と耐性ウイルスの出現
薬の効果を最大限に引き出すには、薬の濃度を一定に保つ必要があります。薬が体内で有効な濃度以上に保たれていれば、HIVは増殖できません。
もし服薬を忘れて血中濃度が低下すれば、HIVが増えてしまいます。その結果、薬の効果が低下し、薬剤耐性のHIVが発生する可能性があります。
そのため、抗HIV薬の内服を始める際には、患者の生活リズムや環境について情報を集め、薬剤師やメディカルソーシャルワーカーなどと協力しながら準備を整え、服薬の継続を支援することが大切です。
服薬の継続には、生活環境の調整をベースにして、周囲の支援や適切な薬の組み合わせや使用方法、治療の効果への期待、生活の喜びや目標、経済的な負担の軽減などが関わってきます。したがって、患者と共にこれらの要因を話し合い、意思決定できるように支援することが重要です。
抗HIV薬の服薬管理における長期合併症や高齢化による影響
長期にわたる合併症の治療に、脂質代謝異常や心血管系疾患などの治療薬を併用する場合、これらの治療薬の管理や副作用のモニタリングが追加され、管理する薬の数や方法が複雑になります。
さらに、高齢化による嚥下機能の低下や認知障害がある場合、薬剤管理方法や服薬のみを忘れないようにする工夫、ポリファーマシーに関連する問題などを薬剤師と協力して支援する必要があります。
日常生活の注意点と2次感染予防
生活リズムの調整や栄養バランスの確保は基本的なケアですが、これらは服薬アドヒアランスを維持する上でも重要です。免疫機能が低下している場合、生の食品や生水に対する注意が必要です。
一方で、食器やトイレ、風呂、洗濯機の共用、握手、くしゃみなどでは感染のリスクは低いです。患者や同居者、介護者には、通常通りの生活ができることや、介護が必要な場合でもスタンダードプリコーションを遵守することで感染を防げることを説明する必要があります。
また、HIV感染症は性感染症の1つであり、他者に感染させないことや、他の性感染症に罹患しないようにするという2つの感染防止の観点を持つ必要があります。
出血時の対処は基本的に患者自身が行い、歯ブラシやカミソリなどの共用を避けること、使用した注射器や針は非貫通性の容器に入れ、病院で廃棄することなどを説明します。
感染者自身の健康管理という観点で、性行動や将来のより安全な性行動(セーファーセックス)について話し合うことが重要です。
また、治療により検出限界値未満を維持していれば性行為によりHIVを感染させることはないため、治療により検出限界値未満を維持している場合は、妊娠を避けるための避妊をする必要がありません。
性に関する話題は、抵抗を示す患者もいるため、患者の興味のあるトピックから話を展開していくなど、患者と率直な話し合いを持てる態度や真摯な姿勢が必要とされます。
HIV感染症/AIDSに関連する社会資源
HIV感染症/AIDSに関連する社会的な支援として、医療費や障害福祉サービスの利用が可能です。特に医療費に関する制度の柱は、(1)身体障害者手帳の取得、(2)自立支援医療(更生医療)、および(3)重度心身障害者医療費助成です。
(1)身体障害者手帳の取得
HIV感染症は、CD4値を中心とした検査データや自覚症状の程度をもとに、障害等級が1級~4級まで設定されています。
身体障害者手帳と自立支援医療(更生医療)については、治療の経過と
共に、市町村窓口での更新手続きが必要となります。その際市町村から
の更新のお知らせがHIV感染を知らない関係者に渡ることがないよう、
秘密保持や人権擁護に気をつけることが必要です
(2)自立支援医療(更生医療)
自立支援医療(更生医療)は、障害を軽減するための医療費を軽減する制度です。HIV感染症に関しては、抗HIV療法や日和見感染の予防と治療が対象となります。
身体障害者手帳の取得と特定の医療機関での事前手続きが必要ですが、障害の程度にかかわらず利用できます。自己負担率は1割であり、さらに所得に応じて月額の自己負担上限が設定されています。
※自立支援医療制度についてはこちらの記事も参考にしてみてください。
(3)重度心身障害者医療費助成
重度心身障害者医療費助成制度は、健康保険に加入している重度の障害のある方が、病気やケガで医療機関にかかったときの保険診療の一部負担金を助成する制度です。
障害の重い方の医療費を助成する制度です。助成される自己負担額の程度や対象となる等級、所得制限の基準などは、居住する市町村ごとに異なります。特に自宅で療養しているHIV患者にとって重要な訪問看護が適用されるかどうかも、市町村の窓口に確認する必要があります。
HIV感染症/AIDSの訪問看護の利用とは
介護保険の対象となる方は介護保険を、非該当の方は原則として医療保険を利用します。介護保険では、訪問看護も他のサービスと同様に、区分支給限度基準額の対象となります。一方、医療保険の場合は特別な事情がない限り、週に3回が訪問回数の上限となります。
エイズ(後天性免疫不全症候群)が病名として認定されると、年齢にかかわらず、がん末期などと同様に、医療保険が適用されます。その場合、訪問回数の制限はありません。
自立支援医療(更生医療)を利用する場合、同じ月に発生した病院での医療費と訪問看護の医療費を合算し、月額上限まで自己負担することになります。
まとめ
今回は、HIV感染症/AIDSをテーマにその概要から在宅療養における特徴、訪問看護に求められる役割と知っておきたいポイント 等についてお伝えしました。
HIV感染症は、治療の進歩により長期存命が可能の慢性疾患の一つとして捉えらえるようになった一方、療養の長期化や高齢化に伴う合併症や併存疾患への対策が重要になってきています。
そのため、HIV感染者とその家族が住み慣れた地域で自分らしく生活をおこなうために訪問看護は、重要な役割を担うこととなります。
本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。
参考文献:平成 24 年度 厚生労働科学研究費補助金 エイズ対策研究事業「訪問看護・介護職員向けHIV 感染症対応マニュアル」